IRって”Investor Relations”の略だから、投資家のためのものに見える。
たいていの人は、会計分かんないし~、と見向きもしないことが多いけど、
営業やマーケティングなどを担当する人、さらには就職活動をする学生にとっては、
まさに宝の宝庫。正直、投資家が活用するよりも、ありがたみが大きい情報。
たとえば、歴史学では、生の史料に近い順に一次史料、二次史料…と分類する。
これと同じように考えると、ある企業や業界を知りたくて調べようとした時、
新聞や関連書籍を真っ先に調べようとする人が多いけど、これは二次史料だよね。
企業自身が作成したIR情報は、もちろん一次史料に該当する。
これを無視して調査しようだなんて、歴史学者からすればありえない愚行。
数字が苦手だ!と目を回す人に、有価証券報告書を読め、とまでは言わない。
最低限、決算説明会のプレゼン資料や質疑応答集くらいは活用したいもの。
ビジネスマンの三種の神器は、英語・IT・会計と言われるけど、
会計のビジネスでの生かし方を説いた本ってあまり見当たらない気がする。
(もちろん、会計士や税理士、経理財務の人はそれが仕事だから使って当然だけど)
望月実&花房幸範「有価証券報告書を使った決算書速読術」くらいかな。
P86~98に取引ゼロから3年間で10億円売り上げた営業マンの体験談がある。
この人(ITメーカーの社員)は有価証券報告書を
- 経営指標の推移・セグメント情報(予算がありそうか?)
- 従業員の状況(どれくらい売れそうか?)
- 主要な設備の状況(どこに売るか?)
- 役員の状況(どの拠点に投資能力があるか?出世コースの部門を探す)
- B/Sのソフトウェア勘定(増加傾向ならIT投資も活発)
- 関係会社にも売れるか?(親会社を落として芋づるに)
- どの拠点が投資予算を持っているか?
というふうに営業活動に使っていたらしい。
コメント
歴史では「史」料なんですね。知りませんでした。
生の資料は慣れないと読み込むのがつらいことはあっても、対象を良く知るには一番だというのは分かります。
IRの資料って企業によって充実度が激しいですよね。
EDINETだと5年前までの有報しか載っていないので企業HPのIRライブラリで調べても、20年分も公開してくれている(!)所もあれば、決算短信ですら直近のものしかない所まである(笑)
私も「資料」だと思ってて、この記事書こうとしてはじめて「史料」だったことに気がつきました。間違えないように文字変換するのが大変でした(笑)
P.S.
実際に活用している人の体験談が書かれた本があることを思い出したので、記事の後ろに追加しました。
まろさん
はじめまして。
有価証券報告書を使った決算書速読術の著者の望月実です。
本書をご紹介いただき、ありがとうございます。
ビジネスマンにとって大切なのは、
数字を見てその会社の是非を判断するのではなく、
会計を「数字の裏側にあるビジネスをリアルにイメージするための道具」
として使えるようになることだと思います。
そのような思いで、本書を書かせていただきました。
それでは、これからもよろしくお願いします。
望月先生、コメントありがとうございます。
先生の著書を何冊か読ませていただいていますが、この「有価証券報告書を使った決算書速読術」が最高だと私は思います。出版からそろそろ2年経つので、その後書かれた本も踏まえた改訂版をご検討されてはいかがでしょうか? 私は改訂版をぜひ読みたいです。