その昔、ノエル・ペリン「鉄砲を捨てた日本人」に感動した。
時代に合わせ、鉄砲鍛冶の刀鍛冶への転身が描かれた一冊。
私もこれにつられてもう一方のルート、
鉄砲鍛冶が花火職人へと転身した話を好んで書いてきたけど…
ちゃんと調べると江戸時代に鉄砲が完全に捨てられていなかった。
1793~1804年に編纂された「成形図説」の図版を見ると、
鉄砲を携えた百姓の姿が描かれている。
鉄砲鍛冶の規制(1607)、鉄砲所持の規制(1662)はされるが、
鉄砲の管理は村まかせで規制はあってないようなもの。
農村では獣害を防ぐため、普通に鉄砲が使われ続けたようだ。
「関東では1729年から1838年までの100年間で在村鉄砲数はほぼ倍増したが、増加分のほとんどが隠し鉄砲であった。隠し鉄砲が増えていくと、やがて獣害対策や狩猟以外にも鉄砲が用いられるようになっていった。その最たるものが、神社の祭礼の際の的当てゲームだった。」(歴史科学協議会「歴史の常識を読む」P149)
でもこうした環境にあっても百姓が一揆や打ち壊しで、
武器として鉄砲を用いた例はないという。
つまり江戸時代の鉄砲をめぐる着目点は、
- 鉄砲を捨て、軍縮に成功した社会ではなく、
- 鉄砲を保持していても武器として使わない社会
ってことだね。
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