時間の共有が日本の成功要因/角山栄「時計の社会史」

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11時45分!

12時が迫ることに気付いたシンデレラは舞踏会を後にする。

「シンデレラ」は「眠れる森の美女」や「赤ずきんちゃん」とともに、
17世紀にシャルル・ペローがまとめたヨーロッパの民話。
この時すでに民衆には15分刻みの時間感覚があったことになる。

18世紀にフランクリンが”Time is Money”と言ったように、
近代化する社会において、時間は貨幣と同じように貴重。

経済の発展には階層を超えた時間感覚の共有が必要であり、
それを後押ししたのが、正確に時を告げる機械時計の普及だった。

機械時計は13世紀末にイタリアのカトリック修道院に登場し、
15~16世紀のルネサンス期を経て、ヨーロッパへひろがった。

やがて東洋にも機械時計は伝来するわけだけど、
その受け入れ方の差が後の近代化のスピードを左右する。

機械時計の登場以前、農業中心の社会では、
日の出から日没の時間を12で割った時間を1時間としていた。

つまり季節によって昼間と夜の1時間が変わる(不定時法)。
一定の時を刻む機械時計(定時法)は、庶民の生活にはそぐわない。

中国、日本ともに機械時計が上陸したのは16世紀後半。
中国では庶民の生活リズムに合わないことから無視されて、
皇帝の高級玩具という程度の位置づけにしかならなかった。

一方の日本。

今と変わらず好奇心旺盛な私たちの先祖は、
定時法の機械時計は使いにくいから不定時法に作り替えちゃえ!
というノリで、自動で時間の長さが切り替わる和時計を発明。

古代より小型化好きな伝統から、印籠時計なんてものまで登場。

こうしてヨーロッパと形は違えど大名から庶民まで時間の共有が実現。

  • 技術を愛する国民性
  • 早くから社会で共有する時間の流れ

が日本にあったからこそ、東洋で最も速く近代化が遂げられた。

日本人の時に対する感覚が西洋的なものに変わるのは、

  • 東洋の時間…時間は現在の連続であり、過去も未来もない
  • 西洋の時間…過去→現在→未来の直線的な時間

江戸時代の機械時計の普及にあったのかもしれない。

この時計への対応のほかに以前も書いた会計の話など、

日本の成功要因は探せばいろいろ出てくるだろうけど、
根底にあるものは、

の2点につきるのだと思う。
そして前者については人生全般に言えるんじゃないかな。
好奇心いっぱいの人に幸せが集まってくるものだから。

幸せとは、一箇所にとどまって、これで幸せというものではなく、現在進行形で動き続けているもの、変わり続けているもの。変わり続ける中で、新しい発見があるもの。やりがいを感じることや充実感があることを見つけ続け、探し続ける、そのプロセスです。

---羽生善治「結果を出し続けるために」P195

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