私はただの個人投資家ではなく、投資好きがぶっ飛びすぎて(笑)、
会社相手に保有株式の買取価格を争う裁判までしてしまった変わり者。
その時の経験や学んだことを少しだけブログに書き残しているから、
ときどき相談の問い合わせを頂いて、年内にもう1件あるかな。
「会社側が提示した買取価格に納得がいかない」という話になれば、
会社側が作成した株価の算出方法は、おそらくDCF法なんだろう。
求めたい株価から逆算して、もっともらしい説明を付けることができるから。
DCF法って計算式が難しいから、それにビビッて思考停止しちゃって、
「なんか凄そうだから正しいに違いない。」と勘違いしないようにね。
企業価値を評価なんてレベルにはなく、数字を使って主観を述べてるだけ。
DCF法は今後の経営計画や割引率など、計算の初期条件が少し変わると、
最終的に算出される企業価値が大きく狂ってしまうんだ。
分野はだいぶ違うけど、19世紀後半の数学者ポアンカレが、
「自然の法則と誕生時の宇宙の状況について正確に分かれば、その宇宙の以後の状況を正確に予測できるだろう。だがたとえ自然法則が私たちにとって何の神秘でなくなったとしても、初期条件については以前として近似的にしか知りえない。・・・初期条件の小さな差異が最終的な現象のなかで巨大な差異を生む場合がありうる。かくして予測は不可能になる。」
と語っているのと同じ問題が、DCF法やポートフォリオ設計で使われる、
いわゆるCAPM(Capital Asset Pricing Model)でも起きちゃってる。
企業の本質的な価値を正しく算出する方法はどこにもないんだ。
上場企業であれば経済学者ポール・サミュエルソンが語ったように、
「買手と売手が市場で合意した価格に勝る、正確な本質的価値はおそらくない。」
最後にオマケ。
投資家としての私は、企業価値評価にはすでに興味を失い、
バフェットさんの”intrinsic value”よりも、羽生善治さんの直感や大局観。
そして投資をはじめたての頃に出会った、とある老投資家の教え、
「真の投資家とは、古今東西あらゆるものに精通した人間をいう。」
を大切にしているよ。
※関連記事…DCF法はすでに死んでいる(09/05/16)
※参考文献…メラニー・ミッチェル「複雑系の世界」(ポアンカレの引用)
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