現代科学用語の源流は長崎にあり!

日本人が外国語習得を苦手とする理由の一つとして、
日本語が翻訳語として優秀すぎることが挙げられる。
英語圏以外で自国語で高等教育を受けられる国は珍しいから。
その礎を作ってくれた偉人はいったい誰なのか?

日本語の科学用語の源流を探ってみると、
江戸時代、長崎出島のオランダ通詞にたどり着く。

オランダ通詞の頭脳は現在の翻訳家とはレベルが違う。
日本よりはるかに進んだ西洋文明を読み解き、
そのキーワードにふさわしい日本語を生み出し当てはめる。
科学者と言語学者を兼任した天才たちなのだ。

そして科学用語成立に寄与度の高いオランダ通詞は、
次の3名ではないかと思われる。

  • 本木良永(1735~1794)
  • 志筑忠雄(1760~1806)
  • 馬場佐十郎(1787~1822)

日本に初めてコペルニクスの地動説を紹介した本木良永。
本木が「惑星」「恒星」といった天文用語を、
本木の業績を受け継いだ志筑忠雄が、
引力」「遠心力」「重力」「衛星」などを創案。
志筑に師事した馬場佐十郎に蘭学を学んだ蘭学者に、

  • 宇田川榕庵(1798~1846)
  • 青地林宗(1775~1833)

がおり、宇田川榕庵は様々な科学用語を創案し、

  • 元素名…酸素水素窒素炭素
  • 化学用語…酸化還元燃焼溶解

青地は訳語のバラツキを統一するため組織を提唱、
日本の翻訳事業に功績を残した人物。
また青地の娘婿で宇田川榕庵の養父、玄真の孫弟子にあたる

  • 川本幸民(1810~71)

は日本で初めて「化学」という言葉を用いた蘭学者だ。

上記のような天才たちの偉業によって、
日本人にとって科学が身近になったと言っても過言ではない。
そして子どもの頃に母国語で科学に触れられることが、
日本人のノーベル賞受賞にもつながっているかもしれない。


オマケで本木良永とノーベル物理学賞のつながりを。
本木良永の叔父にあたる西時習の直系子孫にいるのが、

  • 西周(1829~97)

で「哲学」「芸術」「理性」といった用語を生み出した人物。
そして西周の従兄弟の子にあたるのが、

  • 森鴎外(1862~1922)
  • 小金井喜美子(1870~1956)

小金井の孫としては星新一が有名だが、
孫の一人の結婚相手が戦後の天才物理学者

  • 坂田昌一(1911~70)

であり、
坂田門下からノーベル賞の受賞者が輩出される。
2008年にノーベル物理学賞を受賞した

  • 小林誠
  • 益川敏英

英語が苦手でもノーベル賞を受賞した益川教授が、
オランダ通詞の功績の恩恵を受けた代表と言えるかもね。