古今和歌集に詠まれた「桜色」

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桜の季節になると和歌とたわむれたくなるもの。
今年の東京の桜は満開になった直後から雨が続いている。
雨がやみ、お花見日和になる頃には、桜は散り始めだろうか。

というわけで、まもなく散ろうとする桜歌を鑑賞するうちに、
古今和歌集でとても気になる一首と出逢った。

桜色に 衣は深く 染めて着む 花の散りなむ のちの形見に

紀有朋(古今集の撰者、紀友則の父)の歌。
桜の散った後の思い出となるように、衣を桜色に染めて着る。

桜色」という表現が珍しいなと和歌データベースで検索すると、
どうやらこの一首が桜色を詠った最も古い和歌のようだ。

私たちはモノという存在がまずあり、それに名称が付けられると考えがち。
でもガイ・ドイッチャー「言語が違えば、世界も違って見えるわけ」を読むと、
実際にはその逆であることがよく分かる。

たとえば虹は日本では七色だと考えられているが、
世界に目を向ければ、五色や六色と認識する国もある。
つまり言葉が違えば、認識する対象もそれに応じて変化するものなのだ。
またその対象を表現する言葉がなければ、そのものが眼に入らない。

色の表現が乏しかった古事記の時代から、

しだいに日本人の色彩感覚が豊かになっていく。
そんな時代の移り変わりを感じさせる一首といえるだろう。

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