後拾遺和歌集の中秋の名月

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今年は明日が中秋の名月(旧暦八月十五夜)ということで、
去年、手に入れた岩波文庫の「後拾遺和歌集」から、
中秋の名月を詠った和歌を抜き出してみた。

まずはおさらい。
勅撰和歌集での月の和歌が増えはじめるのが「後拾遺和歌集」。

たとえば古今和歌集では中秋の名月を詠った和歌がなく、
平安時代初期は月見が不吉とされていた可能性もある。

そうだとすれば、白居易(白楽天)の影響か?

さらに日本では月見の習慣が定着する平安末期以降でも、
中秋の名月(八月十五夜)ではなく、九月十三夜の月見が好まれていた。

さて後拾遺和歌集では中秋の名月は次の5首が収録されている。

いにしへの 月かゝりせば 葛城の
神は夜とも ちぎらざらまし

いにしへの空にも今日のような月が出ていたら、
葛城の一言主神(昼間は働かず夜間だけ働く神様)も、
月を眺めることができたろうに。

夜もすがら 空すむ月を ながむれば 
秋は明くるも 知られざりけり

澄み渡った空の月を眺めていたら、夜が明けるのも気付かなかった。

憂きままに いとひし身こそ 惜しまるれ
あればぞ見ける 秋の夜の月

死んでしまいたいと思ったけど、生きているからこそ、
この美しい秋の夜の月を見ることができた。

今宵こそ 世にある人は ゆかしけれ
いづこもかくや 月を見るらん

今宵は私と同じように世の中の人々もまた月を眺めているのだろうか。

秋も秋 こよひもこよひも 月も月
ところもところ 見る君も君

中秋の名月に時の権力者、藤原頼通を重ねて讃えた一首。

とくに4番目の歌(作者:赤染衛門 956~1041年)からは、
どうやらこの時期には中秋の名月を愛でる習慣が定着し、
広く一般に受け入れられていた様子が読み取れて興味深い。

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