瀬戸内海を救った牡蠣の浄化力。美味しさには山の栄養分が不可欠。

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貝塚から殻が発見されるほど昔から食べられていた牡蠣。
昔は沿岸の岩場にたくさん生息していたようで、
浜に牡蠣の殻が転がっている様子が古事記に詠われる。

夏草の あひねの浜の 牡蠣貝に 
足踏ますな 明かしてとほれ

里海資本論」を読んでいて驚いたのだが、
かつての瀬戸内海汚染の代名詞だった「赤潮」は数年前にはなくなり、
その海の浄化に牡蠣が一役買っているのだという。

瀬戸内海と牡蠣の歴史を簡単にまとめると、

  1. 戦前、自然の牡蠣が育つ沿岸の岩場は瀬戸内海沿岸にいくらでもあり、主に干潟で盛んに養殖された。
  2. 高度経済成長の時代、瀬戸内海は埋め立てられ工場が建ち。牡蠣養殖は沖へ。
  3. 富栄養化物質の窒素やリンが大量に含まれた工場排水が海に流れ込み、プランクトンが大量発生「赤潮」。
  4. 1970年代には1年に300回近くの赤潮が発生。しかし2010年にはほぼ見られなくなった。それはなぜか?
  5. 海に流れ込むリンの規制(1979年)、窒素の規制(1996年)はもちろん牡蠣の浄化力の恩恵がある。

牡蠣は、たった1個で1日に風呂桶1杯分(約300リットル)の水を取り込み、体内を通過させ、プランクトンをこしとって食べる。それが瀬戸内海全体で65億個。巨大な「天然の濾過装置」が海の中で年がら年中、稼働しているわけだ。」(里海資本論)

沿岸部の開発により、干潟で牡蠣を養殖することができなくなっても、
あきらめずに沖で牡蠣筏を使って養殖し続けた効果が出たということ。
めぐりめぐって牡蠣好きの人々が瀬戸内海の海を守ることに一役買っている。

ふと思い出すのが三重県英虞湾をはじめとする沿岸海域の汚染。
ミキモトをはじめとする真珠養殖業者により汚染され、今も赤潮が続く
ここでも牡蠣の養殖は行われているが、生産量が少なく浄化効果が薄い?
※日本一の広島県の10.68万tに対し三重県は0.32万t。

また牡蠣は海を浄化するだけでなく、生態系作りにも大切な存在だという。

カキは海水をエラで濾しとり、エサにならないプランクトンは未消化の状態で排出します。これを偽糞(ぎふん)といいますが、海底にすむカニなど他の小動物のエサになります。小動物が多ければそれらをエサとする魚たちも集まって来ます。こうして浅海域の生態系を形づくります。」(フジクリーン工業Webサイト

いいことづくしの牡蠣だが食材として美味しくなるためには、
海と山を一体で考え、海に流れ込む川の水源の森作りが大切なのだとか。

工場排水の中に含まれる栄養分ではなく、
山から流れ込んだ栄養分で育った牡蠣の方が美味しくて当たり前。

でも残念ながら私は牡蠣は食わず嫌い。。。

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