上杉謙信というと戦国武将の中でも高潔なイメージがあるが、
丁寧に歴史を読み解くと、少し違う姿が見えてくるようだ。
田家康「気候で読み解く日本の歴史」によると、
謙信の関東遠征は、
- 1560~1574年にかけて12回
- そのうち8回は秋から翌年の夏にかけて関東平野で越冬
一般的には北条氏から関東の領主を救うための遠征だったとされる。
でも謙信が北陸や北信濃に出兵する際は秋の収穫期が多く、
長期遠征で越冬するのは温暖な関東に対してだけだったことからも、
謙信出兵の主な動機は自国の飢餓対策だったのではと指摘している。
また謙信ファンには残念なことに、
1566年の関東遠征の際には戦争奴隷の人身売買の記録も。
「景虎ヨリ、御意ヲモツテ、春中、人ヲ売買事、廿銭程致シ候。」
まぁこの時代の奴隷売買は一般的で、
ポルトガルも絡んだ国際的な売買ネットワークが形成されていたほど。
でも戦場で高い勝率を誇り、越後の領民を飢餓から救った謙信は、
領民にとっては「正義のヒーロー」であったということはいえる。
最後に謙信の「敵に塩を送る」というエピソードは、
無償で武田信玄の甲斐へ塩を提供した訳ではなくあくまで取引。
塩不足の甲斐となら通常よりも有利な価格で取引できたことだろう。
こうして見ていく「義」というより「経済感覚に優れた」人物って感じだね。
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