今年の中秋の名月は9月22日なんだって。
先月は満月近くに、ちょうど多摩川の花火大会が重なり風流を楽しんだ。
もしも夜空に月がなかったら、、、なんて考えてみると、
月が文芸の分野に与えた影響が、いかに大きかったかよく分かる。
たとえば、百人一首のうち、月を歌った歌は11首。
- 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
- 今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
- 月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
- 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
- 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづくに 月宿るらむ
- めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
- やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな
- 心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
- 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
- ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる
- 嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
悲しくなったら、なんとなく夜空を見上げて、月に想いを投影する。
「月は地球の近くにあったのに、だんだんわれわれから遠ざかっている。・・・われわれの遺伝子や脳には月がだんだん遠のいていったという古来の記憶が伝播されていて、それが月に対するはかなくやるせないおもいを駆り立てているにちがいない。」
---松岡正剛「ルナティックス」P52
現代でも月を眺めて、哀愁にひたることくらいはできるかもしれない。
でも、かつて人々が月に抱いていた、近くて遠い別世界のイメージはない。
かぐや姫のような月の住人とか、月のうさぎがお餅つきとか、
月から神秘的でロマンチックなイメージが失われて久しい。。。
私たちが今、別世界やもうひとつの世界を思い描く対象はネットの中?
なんだか味気ない…。私も中秋の名月を観ながら和歌でも詠みますかね。
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