高度経済成長期の終身雇用・年功賃金、といった日本型経営の象徴は、
商人の歴史から見ると、日本の伝統から逸脱した特異な現象だと思ってた。
商人のというのがミソで、武士の俸禄の方には目が届いてなかったことに気づく。
司馬遼太郎「この国のかたち・4」でこんな記述と出会ったの。
「封建の武士が世襲する禄は将来の戦死を含む戦場の働きを見越して主君が与えるいわば前渡金であって、家臣としては武功をたてるか、討死することで貸借対照表がゼロになる。」
その時々の働きに応じて給料が支払われるのが普通だけど、そうではないかたち。
なんとなく、武士の俸禄と終身雇用の年功賃金を結びつけられそうな…
内田樹「日本辺境論」を読んでいたら、関連しそうな話が出てきたから付け足し。
新渡戸稲造が「武士道」のなかで、
「武士道は『或るものに対して或るもの』という報酬の主義を排斥するが、狡しらなる商人は容易にこれを受容する。」(P70)
つまり、
努力と報酬の間の相関を根拠にして行動することは武士道に反する
ことを指摘していて、これは日本文化の深層に届く洞見であると。
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