その時代の先端をとことん追求した後に「美」に目ざめる。
日本文化史を追っていると、そんな場面によく出会う。
これまで見てきた代表的な人物の名をあげるなら、
あたりがあげられるだろうか。
時代をくだると民芸運動(1926~)を起こした柳宗悦もおもしろい。
青空文庫で著作が読めるから、iPadで読みあさっている。
空前の好景気に沸いた世界恐慌の数年前の時代の話。
「伝統とは長い時代を通し、吾々の祖先たちが、様々な経験によって積み重ねてきた文化の脈を指すのであります。そこには思想もあり、風習もあり、智慧もあり、技術もあり、言語もあるわけであります。それは個人のものではなく、国民全体の所持するものであります。いわば歴史的なまた社会的な性質を帯びます。かかる伝統はその国固有のものでありますから、国家的な財産と見なしてよいでありましょう。」柳宗悦「手仕事の日本」
輸入物の贅沢品や高価な骨董品ではなく、
無名の職人による伝統的な民芸品に美を見出した柳宗悦。
産業革命後のイギリスでウィリアム・モリスが主導した
アーツ・アンド・クラフツ運動に影響を受けたのだとか。
「特別な時に美を求めるより、平常の生活に美を即せしめることが何より大切です。この要求に応ずるものこそ民藝であるというのが私の答えなのです。」柳宗悦「美の国と民芸」
日本の美術品と西洋の美術品のもっとも大きな違いは、
観賞用の西洋に対して、日本は用の美を愛でるところ。
茶器のように茶会に使われてはじめて美が完成する。
生活から生まれた芸術なのか、芸術から生まれた生活なのか。
そんな境界線があいまいな日本の美意識を感じ入ると、
ガラスケースに収められた美術品が気の毒に思えてきた。
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