一度きりの人生だから、やりたいことに思いっきり打ち込んで、
名人や達人、師匠などと呼ばれるところまで行きたいもの。
「徒然草」は理想の生き方を追い求めた記録でもあり、
そこには兼好法師が憧れた名人が描かれている。
「初心の人、二つの矢を持つ事なかれ。後の矢を頼みて、始めの矢になほざりの心あり。毎度、ただ、得失なく、この一矢に定むべしと思へ。」(92段)
弓矢の名人は、弟子が2本の弓を持って的に向かったところ、
後の矢をあてにして気が緩むから、1本入魂で行け!と説いた。
戦場での命を賭けた戦いであれば、ごく自然な教えだよね。
今この時を大切に生きよ!を説いた、兼好法師が好きそうな話。
サラリーマン・ファンドマネージャーなんかより、
成績の浮き沈みがそのまま自分の資産に反映される
個人投資家の方が腕が良くて当然、なんて話と近いかな。
「目くるめき、枝、危きほどは、己れが恐れ侍れば、申さず。あやまちは、易き所になりて、必ず仕る事に候ふ。」(109段)
木登りの名人(庭師)の教えでも、気の緩みに着目している。
高い所ではなく、地面までもう少し、という高さが最も危険。
一見すると安全な局面が、気の緩みを生み、危険を呼ぶ。
投資でも下落相場より上昇相場の方が損をしやすかったりする。
「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手か、疾く負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目なりとも、おそく負くべき手につくべし。」(110段)
双六の名人の必勝法は、「負けないように打つこと」。
攻め急いでカウンター一発に敗れることはサッカーでもよくある。
勝負事では攻撃的に美しく勝つのは、とても難しいことなんだ。
だからこそ美しさを求めてみたくなるものだけど…
「能をつかんとする人、『良くせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。内々よく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ』と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。 」(150段)
最後に兼好法師から、これから名人を目指す人たちへメッセージ。
上手くならないうちは、こっそり練習してそれから人前へ…
なんて言っているうちは、芸は上達しない。
恥を捨てて人前に出て、一流の人に混ざって学びなさい!
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