博物館や図書館、劇場などの文化施設について論じた、
佐々木秀彦「文化的コモンズ」を読んで、気がついたこと。
私が図書館に求めているものは、あるべき姿ではなかったかも。
自宅から徒歩数分の距離に、本棚や閲覧スペースはなく、
インターネットで予約した本の貸出と返却のみを受け付ける、
図書館のカウンター機能のみの施設がある。
ここに2日に1度は通って本を借り、面白かったら熟読して、
線を引いたり、付箋を付けて、繰り返し読みたい本に出会えたら購入、
というような読書生活を続けている。
この施設ができて約10年。徒歩圏に図書館のない生活は考えられない。
1970年に日本図書館協会が発行した「市民の図書館」。
ここには図書館の目指すべき姿が描かれている。
- 市民の求める図書を自由に気軽に貸し出す
- 児童の読書欲求にこたえ、徹底して自動にサービスする
- あらゆる人々に図書を貸出し、図書館を市民の身近に置くために、全域にサービス網をはりめぐらすこと
1950年代の公立図書館は、館外貸出には保証人や印鑑、住民票等が必要。
その結果、学生が勉強部屋代わりに使うだけの施設になっていた。
こうした状況を変えるために、貸出サービスを前面に改革が実施される。
この流れの延長線に今の私の恵まれた読書生活がある。
でも貸出を中心に据えたことで、図書館員の専門性があいまいになり、
やがて公立図書館が非正規職員による官製貧困を生み出す温床に。
2000年代には低迷する出版業界から「無料貸本屋」と揶揄される。
1980年代前半に、超党派議員による図書館振興に関する議員立法の動き。
しかし国立、公立、学校など所管がバラバラの体制を一元化する内容に、
図書館関係者から国家による中央集権的な管理に反対の声があがり挫折。
ここが運命の分かれ道だったと、著者は説明していた。
2010年代以降には、地域図書館で新たな動きが見られる。
- CCC運営による佐賀県の武雄市図書館(2013)。スタバや書店を併設して夜21時まで営業。イベント開催も常時開催。図書館利用者を消費者として、できるだけニーズに応えようとする形。その後、神奈川県海老名市(2015)、宮崎県多賀城市(2016)、岡山県高架市(2017)、山口県周南市(2018)、宮崎県延岡市(2018)、和歌山県和歌山市(2020)も採用。
- IRI知的資源イニシアティブが実施する“Library of the Year”。住民が主体となって図書館活動に関わる図書館の受賞が多い。瀬戸内市民図書館、長野県小布施町立図書館、福井県鯖江市図書館、兵庫県伊丹市立図書館など。図書館に精通した職員の存在が不可欠。
図書館にぎわいをもたらすための事業者を確保するのがいいのか?
内部人材を確保を重視し、住民参加による地域文化の拠点とするか?
施設維持のために何が重要か、自治体と住民の見識が問われる時代に。
図書館の本質について深く考えずに本を借りまくってきた。
この先、大きな図書館のある街に引っ越すことがあれば、
図書館が実施する地域振興のための活動を手伝うべきだな。
これまでは株式投資に関連する社会活動を重視してきた。
でも今後は整理縮小して、書籍や食にまつわる分野に関わりたい。
そんなことを考える今日この頃。
コメント