百人一首は和歌の魅力が凝縮された不思議な歌集。
鑑賞本が出版されるたびに買ってしまうのだけど、
今回手にしたのは最新研究も紹介された一冊。
- 田渕句美子「百人一首 編纂がひらく小宇宙」
日本人で知らない人がいない古典だから、
研究されつくされているのだろうと思っていたが…
藤原定家は百人一首の選者だが編者ではない?!
という説が説明されていてビックリ!
私が知っていた通説はおおよそ次の通り。
藤原定家が編纂した「百人秀歌」に収録された和歌101首のうち、
97首が「百人一首」にも収録されており、その差が生じた理由は、
百人秀歌に収録されていないが、百人一首の末尾に登場する2首、
人も惜し 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに もの思ふ身はももしきや 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり
承久の乱で敗れた後鳥羽上皇、順徳天皇の和歌。
定家は鎌倉幕府に配慮して「百人秀歌」には収録できなかったが、
「百人一首」は本来、選びたかった歌で編纂したもの。
ところが本書で初めて知ったのだが、
「百人秀歌」と「百人一首」は歌の配列も異なっているとのこと。
百人一首では詠み手の人間関係や歴史的背景も踏まえて並び替えられ、
和歌に触れることで歴史ドラマも浮び上がるような編集がされている。
ゆえに百人一首の和歌の選者は定家だが、編者は後世の別の人物であると。
また100首のなかには解釈の定まらない和歌もあり、
百人一首はまだまだ研究対象としても面白い存在のようだ。
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