演奏家なしに不朽の名曲は生まれない/チャールズ・ローゼン「演奏する喜び、考える喜び」

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ピアニストで音楽研究家のチャールズ・ローゼン(1927~2010)が、
1993年のインタビューで語った内容をまとめた一冊、

私はクラシック音楽を少々かじったレベルの知識なので、
チャールズ・ローゼンのことはまったく知らない。

でもそんな昔の本がフランスで2016年に復刊、2020年に英訳、
そして今年、日本語訳も出版されるなんてなぜだろう?
と不思議に思い、図書館で借りて読んでみた。

演奏家は作曲家が残した楽譜に忠実であるべきなのか?
という論点が興味深かった。

「忠実さの概念は真正さという幻想に結びついています。演奏者はあるひとつの音楽作品を独立した構造として、あらゆる歴史的脈絡の外で考察すべきなのか? それともその時代の演奏解釈を再創造すべく務めるべきなのか?」

楽譜に忠実に演奏しようとすると、
下のような困ったことが起きるとローゼンは指摘する。

  • 作曲家自身も作品の意義やどう演奏されるべきか正確に分かっているわけではない。
  • 製版社のミスで楽譜の印刷が間違えられており、後に誤りが発見されることもある。
  • 作曲家に「これは楽譜の印刷ミスではないか?」尋ねたところ、本人は作曲当時のことを忘れていて答えられなかった。
  • バッハは一般聴衆の前で演奏されていることを想定して作曲していない。それをどう表現するか?

ゆえに演奏家の存在価値があるのだと。

「演奏とは、音楽に対する自己の考えを提示するひとつの方法です。演奏家はひとつの作品を演奏しつつその認識を深めていき、聴衆に提示できるような総合的な理解を手中にするに至るのだということは明らかです。」

古典と呼ばれる書籍が生まれる過程と似ているのかもしれない。
作品が呼び起こした様々な時代の読者の解釈を吸収することで、
次第に個性が際立っていき、不朽の名作と呼ばれるようになる。

企業と投資家の関係もこんな関係を目指せたら理想的なのだけど。

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