人間は限られた時間の中で何をやろうとしているのか?

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対談集・養老孟司「AIの壁」の中での羽生善治さんの発言。

「例えば、アルファ碁は機械学習で3000万局ぐらい練習しているんです。人間が一生、一生懸命やり続けても10万局ぐらいですからね。AIと人間とでは、時間の観念が違い過ぎる……。まあ、AIに、時間という観念はないですが(笑)。そういう根本のところからまるで違うものが出てきたときに、圧倒されているだけではなく、逆に、人とは何なのかということを考えてみるのは大事なことですね。だって、仮にAI側から「人間は、限られた時間の中で何をやろうとしているんだ?」という視線で眺めてみたら、ちょっと違った景色が見えてきます。実は、今はそういうことが問われているのでは、と思います。」

私たちには時間をかけて努力した分だけ結果が得られるはず、
という祈りにも似た願いが頭の片隅にある。

でも単に時間を積み重ねたところで、何も意味がないよ、
とAIに突きつけられているのだと思う。

いわゆる真面目な人にありがちな間違えは、
同じ場所で無限ループすることに囚われてしまっていること。
今の自分を押し通すことが努力と勘違いしているのだ。
同じ方法の繰り返しなら、AIの得意分野ではないか。

恋を切り口に人生に起きる偶然を読み解いた九鬼周造
自分と世の中との関係を固定すれば安心は得られるが、
関係がゆらいでいるからこそ驚きや感動が訪れると説いた。

また羽生さんは別の著書でこんなことを語っている。

「幸せとは、一箇所にとどまって、これで幸せというものではなく、現在進行形で動き続けているもの、変わり続けているもの。変わり続ける中で、新しい発見があるもの。やりがいを感じることや充実感があることを見つけ続け、探し続ける、そのプロセスです。」(羽生善治「結果を出し続けるために」P195)

変わり続けることで、偶然の幸運に出会う確率を高める。
これと合わさってはじめて、努力した時間が意味を持つということだろう。

AIを知ることは、私たちの生き方を見つめ直すこと。
古代から続く永遠のテーマは終わりがない。

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