藤原定家「明月記」の超新星爆発と星の歌。

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今冬の星空の話題として、オリオン座・ベテルギウスの異変がある。

その星の光が急速に暗くなり、超新星爆発がまもなくかも、とのこと。
地球から650光年の星なのですでに爆発しているかもしれないが。

明月記の超新星爆発

超新星爆発で貴重な資料といえば、藤原定家の「明月記」。

いい機会なので国会図書館のデータベースを頼りに調べてみた。

寛喜二 (1230)年十一月一日に、

「廿八日、西方に客星出づ。甚だ不吉の事と云々。」

西の夜空に見慣れない星(客星)が現れたことを不吉に思った定家は、
時の陰陽師、安部泰俊(安部清明の子孫)に、過去の出現例とその吉凶を問う。

「寄星の事、先例寛平九年、延長八年、寛弘三年、永万治承三年に此の事有り、甚だ不吉と云々。ただし寛弘三年は全く事無し。」(十一月五日の記述)

寛弘三年以外はあまり良くないことが起きている。

「客星の事、上下殊に驚き恐るる。」

身分の上下を問わず、異変に注目し、恐れていたことも読み取れる。

さらに調査が進め十一月八日の記述で、出現例が過去に8件あることが判明。

  • 皇極天皇元年秋七月
  • 陽成院貞観十九年正月廿五日
  • 宇多天皇寛平三年廿九日
  • 醍醐天皇延長八年五月以後七月以前
  • 一条院寛弘三年四月二日
  • 後冷泉院天喜二年四月中
  • 二条院永万二年四月廿二日
  • 高倉院治承五年六月廿五日

このうちの「後冷泉院天喜二年四月中」が、
おうし座・かに星雲の超新星爆発の記録として有名な一節。

「後冷泉院、天喜二年四月中旬以後の丑の時、客星觜参の度に出ず、東方に見え、天関星に孛す、大きさ歳星の如し。」

「天関星」が「おうし座」、「歳星」が「木星」を指す。

天喜二年(1054年)の4月中旬の東の方角、おうし座の角の辺りに
木星と同じくらい明るい星が現れた、という記述だ。

もし昨年末のあたりにベテルギウスが超新星爆発を起こしていたら、
今ごろ、あれが不吉の前兆だった!と話題沸騰だったかもしれない。

定家・星の歌

さて定家はなぜ客星を不吉と感じたのか。
当時の認識がよく分かる定家の和歌を二首。

すべらぎの あまねきみよを そらに見て 
星の宿りの かげも動かず

天皇の素晴らしい治世は空にも反映されており、星も静かに輝いている。

くもりなき 千世のかずかず あらはれて 
ひかりさしそへ 星のやどりに

天皇のくもりなき治世が1000年続き、星の宿りに光をそそいでください。

「星の宿り」は星の位置や運行と天皇の側近をかけており、
天皇の治世により星も臣下も乱れることがない、という認識が現れている。

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