京都と江戸、天皇と将軍のデュアル・スタンダード

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昨年岩波新書から発売された「日本問答」の出版を記念した
田中優子、松岡正剛 両氏の対談イベントへ参加して、
日本を理解するには学びが足りないことを痛感してきた。

内容について行けない部分も多かったので、
本の内容から補足しながら、講演の内容を少しづつまとめていこう。

日本人の発想構造

日本を読み解く研究を進めていく上で、
お二方が意見を出し合った論点が以下の通り。

  1. デュアル・スタンダードという構造
  2. 中国からどういう日本を創ったか
  3. 主語よりも述語を重視する
  4. 文脈依存的な判断力
  5. 「普遍」ではなく「中心のウツ」を見る
  6. 時間はリニアに進まない 「循環」と「世継ぎ」
  7. 「おもかげ」に託する
  8. 顕(あらわるるもの)と隠(かくるるもの)
  9. 才と能の組み合わせ
  10. 縁・軒・廂・庭
  11. 治まる・収める・修む

京都と江戸、天皇と将軍のデュアル・スタンダード

1番目のデュアル・スタンダードについて、
講演内で興味深かった事例が、京都と江戸、天皇と将軍の関係。

江戸時代の日本列島における国家のあり方は、

  • 蝦夷…アイヌは国家を作らず複数の酋長が並び立つ
  • 琉球…中国の冊封体制に入るために統一国家をつくる
  • 大和…天皇と将軍が並び立つデュアル・スタンダード構造

国家のないアイヌと国家を形成した琉球との間の大和は、

  • 幕府は江戸にあるが、天皇は京都にいて首都は京都のまま
  • 幕府と諸藩は冊封体制を見立てた参勤交代による上下関係

というような明治以降の中央集権的な国の形とは違っていた。

「江戸時代に入ってから、幕府の朝廷政策にかかわった天台僧の天海が「天皇には伊勢にお帰りになってもらっていいんじゃないか」と言うと、それに対して徳川の重臣、藤堂高虎が「将軍は天皇を輔弼してこそ信頼を得られるのだから、それはまずいんじゃないか」と答えるんですね。将軍は天皇がいないと成り立たないということが、江戸時代になってもまだ基本だった。」P80

また江戸は都市構造も京都の「見立て」「やつし」「もどき」の側面があり、

これは江戸時代の発想法の代表例とも言えて、
石川淳が「江戸人の発想法」のなかでこんな指摘をしている。

「江戸人にあっては、思想を分析するよりも、それを俗化する操作のほうが速かった。」

「彼らにとって象徴が対応しないような思想はなきにひとしかった。」

>>>つづく

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