企業が機械とか購入した場合、購入額全額がその期の経費にならない、
ってことは投資家のみなさんはご存知のはず…。(減価償却のことだからね!)
設備投資が活発になると、どうして景気がよくなるの?
とある人から聞かれたので、こう答えてみた。
たとえば売買の対象が機械だとすると、
機械を売った側は、100%がその決算期の収益になるけれど、
機械を買った側は、全額をその決算期の費用にできず、
何年間かにわたって減価償却費として計上することになる。
(個々の年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で規定)
ごくごく単純に考えるとこの収益・費用の歪みの分だけ、
企業の利益が増えたように見えるから、景気に好影響を与えると言えるかも。
せっかくなので、もうちょっと減価償却について掘り下げておくと、
減価償却の方法には主に定額法と定率法の2種類があって、
減価償却をする期間が同じでも、費用化されるスピードが違うんだ。
定額法は毎期同じ額を減価償却費に計上していくけど、
定率法は初期に多額の減価償却費を計上する。
業績見通しに自信を持っている企業は定率法を採用しているとも言える。
EDINETで同業種の有形固定資産の減価償却方法を比べてると面白いかも。
たとえば自動車業界からベスト5をピックアップすると、
定率法…トヨタ、ホンダ、スズキ
定額法…日産、マツダ
さらに言うと、もともとこの5社はみんな定率法だったんだけど、
日産は2001年3月期、マツダは2003年3月期に会計処理方法を変更。
変更の際、もっともらしい理由が述べられているが、あれは言い訳(笑)
定率法から定額法への変更は、利益を上乗せするのが目的で、
減価償却費の先延ばしにすぎないんだな~これが。
※関連記事…「継続性の原則はどこ行った?」(06/11/12)
コメント
はじめまして、ケンブックプランです。
トヨタ、と マツダ の ホルダーですが
減価償却法が 違うんですね。
トヨタの収益力なら 定率法は 納得です。
いろんな記事を書かれていて 面白いブログですね。
収益・費用の歪みの分だけ企業の利益が増えたように見える。
うん、なるほど。シンプルで分かりやすい理屈ですね。
勉強になります。
逆に言うと、売り上げが減ってしまった後も、何年間かにわたって費用がかかってしまうことで、ダブルで苦しくなったりすることもありそうですね。
異論があります。
私は、設備投資の増加はトレンド転換の結果であって原因ではないと思います。翌年度以降の減価償却費負担は、(税負担が軽減されると言う点で)メリットになることはあっても、デメリットにはならないと思いますし・・
でも、定率法を採用している企業ってあるんですね。意外でした。長期的に見れば定率法の方が有利だと思いますが、業績見通しに自信がないと当期利益確保のために定額法にせざるを得ない、ということでしょうか。
会計学を通して企業を見るのは面白いですよね。
ケンブックプランさん
はじめまして。
会計処理の違いから、投資余力の差が見えるので面白いですよ。
本当はGMとかとも比べてみたいけど、英語苦手なんですよ。。。
水瀬さん
さすがスルドイですね。
そういえば、バブル崩壊後の不景気を、
減価償却を絡めて語っていた経済学者もいたような記憶があります。
空色さん
減価償却費負担は、その後不景気になると重~い負担になってしまいます。
ちょっとだけ記事に加えましたが、定率法から定額法に変更すると、
費用の繰延べ効果があります。
日産は増益幅を大きく見せるため、マツダは自己資本比率アップのため、
この会計処理方法の変更を行う必要があったと言うわけです。
すいません、前回のコメント、名前が抜けていました・・
不景気のときに償却費負担が重いと利益が圧迫されるというのは分かります。ただ、それは会計上の話で、償却費負担の大小が企業のキャッシュの使い方に影響するかどうかは別ではないでしょうか。
仮に償却費負担の重い企業の株価が下がっても、その企業が積極的にキャッシュを使えば他の企業の利益が増える(株価が上がる)ので、全体としてみれば償却費負担それ自体が景気に悪影響を与えたりするのかな~と思いまして。
つまり、会計上の利益よりも実際のキャッシュの流れの方が重要ではないか、というのが私の意見です。
もっとも、償却費負担の重い企業はキャッシュを溜め込む傾向があるということであれば、私の仮説は崩れてしまうんですが・・
ご無沙汰してます(o^^o)
贈与を利用して節税法や減価償却を利用した体力測定?などいい技持ってますね。
指標分析を好む人の中にはドンドンマイナーな銘柄探しに没頭する人がいる中でまろさんは知識を巧く応用してらっしゃる。
国際優良株というと昨今の円高の影響など考慮・対策などしてますか?
こんにちは!
減価償却はやっかいなやつですね。
おっしゃるように、毎期に渡って定率・定額で費用
計上されますので、利益は上がりますよね。
その分税金は増えますけど・・・・。
企業としては一括償却できたほうがうれしいですよね。
その分タックスシールド効果をはかれますから・・・。
本当にお上はなかなかの仕組みを考えるものですね。
応援ぽち!
空色さんへ
キャッシュフローがどうなるかが重要。私もそう思います。
ただ、バブル崩壊の頃を振り返ると、設備投資をする際に、
企業は多額の借入れをしていたために、新規の投資じゃなくて、
借入金の返済にお金が回ってしまったんですよ。
優良企業はお金溜め込んでたし。。。
野村総研のリチャード・クー氏が「バランスシート不況」と名づけたりもしてました。
企業が手持ちの現金で設備投資をする限りは、私も償却費を気にする必要はないと思います。
しかしスルドイですね。簿記2級で苦戦したなんて嘘じゃないですか?(笑)
トレンドさんへ
最近の記事は…、ちょっと本気だしました♪(笑)
円高はこの程度なら全然気にしていません。
国際優良企業となれば、為替を専門に考えてる社員もいるでしょうから、
考慮・対策は私じゃなくて会社の仕事だと思います。
この辺は結構おおざっぱな私です。
お金博士さんへ
表に出てくる決算書はまだいいですけど、
税務署に提出する方になると、損金不算入だのと、
税法がやたら利益が出るように作られてるし…。
でも、一括償却は過激すぎますよ。
いつも楽しく読んで勉強させてもらってます。
う~ん、設備投資が増えると単純に設備を作っている会社の売上や、更にその会社の供給業者の売上が増える、からお金の回転がよくなって景気が良くなる、んじゃないのかな・・・? これケインズの乗数何とかってやつ。
設備投資している企業は減価償却費にしかならない訳だから、仰る通りだけど。
RINTOさん、ものすごーくお久しぶりですよね。
ケインズの何とか、私全然知りません。
ケインズといえば美人投票くらいの知識しか。。。
経済学の知識はゼロなもので。やっぱりちゃんと勉強しないとダメですね。