模倣と創造。
近年は対立する言葉のように用いられ、多くの日本人を悩ましてきた。
そして「アイデアとは既存の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
といった、当たり前の言葉に感銘を受けてしまったりする。
※ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」より
和歌の世界には、模倣と創造を結ぶ「本歌取り」という技法がある。
百人一首の選者、藤原定家が得意としていた、
過去の歌(本歌)の表現を用いて、新しい歌を詠む技法。
たとえば、
あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
という柿本人麻呂の代表歌を
ひとり寝る 山鳥の尾の しだり尾に 霜おきまよふ 床の月影
と藤原定家が本歌取り。
「月」を新たに登場させることで、本歌をも輝かしたすごい歌なんだって。
伝統を重んじる和歌の世界ならではの、模倣から生まれた創造。
創造は未来ではなく、過去からやってくる。
積み上げられた過去から何かを選び、心を入れて再び輝かす。
真の創造とは何か、日本は800年以上も昔から、知っているはずなのだ。
※関連記事…新技術よりアイデア(10/11/14)
※参考文献…渡部泰明「和歌とは何か」
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