国語学者が読み解く日本の神/大野晋「古典基礎語辞典」

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大野晋「古典基礎語辞典」はめくるたびに発見がある。

古典基礎語辞典以前は「あはれ」と「をかし」の項を紹介したけど、

今日は「」についての部分。

日本の神の性質を順次挙げながら解説していて、

要点を抜粋して並べると、

  1. 神は唯一の存在ではなく、きわめて多数存在した。
  2. キリスト教では God は創造主であり、人間は God に作られたとするが、日本では、人は神の意志の発動によって存在したのではない。
  3. 神は具体的な形を持たなかった。
  4. 神は漂動していて、時に人や物にとりつく。
  5. 神は人間の願いを受けて、来臨し、幸いを人間に与えるとされたが、神意に背くと、神はその人に死を与える恐ろしい存在だった。
  6. 神は物・場所・土地を領有し、支配している。
  7. 日本の神の性格には、恐ろしい、支配的である、という点は顕著であるが、人間を愛するとか、いたわるとか、苦しみを救うとか、慰めるとかいうことはなかった。
  8. 仏教の伝来に伴い、神の本質に変化が生じた。

日本古来の神は超人的な恐ろしい力を持った畏怖の対象。

人間の苦しみを救う力を持った「仏」と掛け合わさることで、

平安時代以後は神は人を助け、救うものと認識が変わっていった。

このところ模倣と創造の境界線が気になっている。

「神」という土台があったからこそ、

「仏」というアイデアを受け入れ、組み合わせることで、

新たな「神」かたちが生まれてゆくということか。

コメント

  1. まーさん より:

    ご無沙汰しております。
    ワタクシは大野先生の『岩波古語辞典』、
    昔から愛用しております。
    読み物としてとても面白いと思います。
    模倣と想像の境界線、気になりますねえ~~~
    というか何十年も気にしております(笑)

  2. まろ@管理人 より:

    古典基礎語辞典の方もぜひ。
    大野先生が「自分が死ぬまで編集し続け、死後に出版してくれ」との遺言を元に発売された辞典なので。