大野晋「古典基礎語辞典」はめくるたびに発見がある。
以前は「あはれ」と「をかし」の項を紹介したけど、
今日は「神」についての部分。
日本の神の性質を順次挙げながら解説していて、
要点を抜粋して並べると、
- 神は唯一の存在ではなく、きわめて多数存在した。
- キリスト教では God は創造主であり、人間は God に作られたとするが、日本では、人は神の意志の発動によって存在したのではない。
- 神は具体的な形を持たなかった。
- 神は漂動していて、時に人や物にとりつく。
- 神は人間の願いを受けて、来臨し、幸いを人間に与えるとされたが、神意に背くと、神はその人に死を与える恐ろしい存在だった。
- 神は物・場所・土地を領有し、支配している。
- 日本の神の性格には、恐ろしい、支配的である、という点は顕著であるが、人間を愛するとか、いたわるとか、苦しみを救うとか、慰めるとかいうことはなかった。
- 仏教の伝来に伴い、神の本質に変化が生じた。
日本古来の神は超人的な恐ろしい力を持った畏怖の対象。
人間の苦しみを救う力を持った「仏」と掛け合わさることで、
平安時代以後は神は人を助け、救うものと認識が変わっていった。
このところ模倣と創造の境界線が気になっている。
「神」という土台があったからこそ、
「仏」というアイデアを受け入れ、組み合わせることで、
新たな「神」かたちが生まれてゆくということか。
コメント
ご無沙汰しております。
ワタクシは大野先生の『岩波古語辞典』、
昔から愛用しております。
読み物としてとても面白いと思います。
模倣と想像の境界線、気になりますねえ~~~
というか何十年も気にしております(笑)
古典基礎語辞典の方もぜひ。
大野先生が「自分が死ぬまで編集し続け、死後に出版してくれ」との遺言を元に発売された辞典なので。