内なる貧しさに豊かさがある by エックハルト

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すべてを捨てた先に真の豊かさがある。

そんな教えを説いた一遍上人(1239-89)が現れた鎌倉時代。

ヨーロッパでも同じような思想を持った人物が現れていた。

キリスト教神学者、マイスター・エックハルト(1260-1328) 。

岩波文庫にエックハルトの遺した「説教集」が収められている。

P162から始まる「三つの内なる貧しさについて」を編集すると…

当たり前のことだけど、エックハルトは考える貧しさは、

物を所有することなく文字通り貧しく生きることではない。

彼はこの一般的な考えを「外なる貧しさ」と定義づけ、

目指すべきは「内なる貧しさ」であると説く。

さらに内なる貧しさには次の三段階があり、

  1. 何も意志せず(至高の貧しさ)
  2. 何も知らず(至純の貧しさ)
  3. 何も持たない(極限の貧しさ)

自らの意志や知識、認識にとらわれることなく、

所有のただ中にあって、所有関係から自由であることが、

真の貧しさであり、それが転じて「豊かさ」につながる。

ヨーロッパでは十字軍(1096-1272)をきっかけに交易が栄え、

物々交換経済から貨幣経済へと移行していく。

日本では平清盛(1118-1181)が力を入れた日宋貿易で、

宋銭が大量に流入し、鎌倉時代には貨幣経済社会へと移行する。

時を同じくしてエックハルトや一遍が「捨てる」ことの大切さを説く。

人が生きるために何が必要で何が必要でないのか考えろ!

そんな過去からのメッセージを受け流し、

次から次へと市場に出現する魅力的な商品に飛びつくことで、

経済的な成功を収めてきたのが、これまでの人類史。

ときおり反省しながら、でも世代が変わると忘れてしまうから、

今後もこの路線が大きく変わることはないんだろうな。

でも個人単位なら、なんとかできるかな。

いよいよ来年が、かねてより隠居を宣言している年だから、

きちんと身辺整理を進めていかねば、とちょっとあせってる…

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