初期条件に依存する未来/ポアンカレ「科学と方法」

「ポアンカレ予想」というのを聞いたことがある。詳しくは知らない。
ただ「偶然」や「未来予測」に関する古今東西の記述を探すうち、
数学者アンリ・ポアンカレの「科学と方法」という本に出会った。
偶然を扱ったP73~74が興味深いけど翻訳が古く読みにくい。
日本語訳を現代語訳するとい大胆な手法で編集してみる。

小さすぎて見落としてしまうような原因が、とても重大な結果をひきおこすことがある。 私たちはこういうものを偶然と呼ぶ。もしも自然の法則と、誕生時の宇宙の状況が正確に分かれば、宇宙の未来を予測することができるだろう。

ポアンカレはこのように偶然を定義した上で、
未来に起きる偶然を必然なものとして予測するには、

  1. 自然の法則
  2. 誕生時の宇宙の状況

を正確に知ることが必要と説いている。
ここでの自然法則とはおそらく、ニュートンの3法則

  1. 慣性の法則
  2. ニュートンの運動方程式
  3. 作用・反作用の法則

を指しているのだろう。
またこの記述は「ラプラスの悪魔」を意識した記述なのかな。

宇宙の現在の状態はそれに先立つ状態の結果であり、それ以後の状態の原因であると考えなければならない。ある知性が、与えられた時点において、自然を動かしているすべての力と自然を構成しているすべての存在物の各々の状況を知っているとし、さらにこれらの与えられた情報を分析する能力をもっているとしたならば…(中略)…この知性にとって不確かなものはなに一つないであろうし、その目には未来も過去と同様に現存することであろう。
---ピエール・シモン・ラプラスの「確率の哲学的試論」P10

そしてポアンカレはラプラスの悪魔を否定する。

だがたとえ自然の法則のすべてが解き明かされたとしても、初期状態は近似的にしか知りえない。・・・初期状態の小さな差異が最終的はに巨大な差異をまねく場合がありうる。かくして予測は不可能となり、ここに偶然が生じるのだ。

この本は1908年に書かれたものだけど、
後に「バタフライ効果」と呼ばれるカオス理論の原型だね。
ブラジルで蝶が飛ぶとテキサスでトルネードが起きるって比喩。
小さな差が重大な結果をもたらす、予測不可能な偶然。。。
なんか難しくなってきたから簡単にまとめると、

  • 限られた知識から予測した未来はおのずと不確実なものに

なるからフロイトの言うよう「未来予測に価値はない」のだろう。
さらに私たちの特性から付け加えるなら、

  • 遠い将来を考えたら自分自身が存在しないから考えたくない
  • 予測する人の性格や人生の見方が予測に影響をおよぼす
  • そもそも人は現在起きていることすら正しく判断できない

というわけで、難しいこと言わずとも未来予測は不可能。
リスクを管理する、リスクを飼いならす…なんてのはヘンテコな話だ。

コメント

  1. 予期せぬことが起こるということだけが予期できる(笑)。
    できることは、「今」を生きる、覚悟を決めることだけ。
    それでは、覚悟を決めるためには?
    葉隠では、「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」
    ある武士は、「禅」に、覚悟のありかたを求めたり。
    さて、現代では、なかなか難しい・・・。

  2. まろ@管理人 より:

    私は「徒然草」派です!
    → http://www.pixy10.org/archives/1991165.html