今日発売の週刊エコノミスト1月29日号に寄稿した記事について、
紙面の都合上、書き足りなかった内容を補足しておく。
ESG投資残高の統計データについて
記事の中では日本サステナブル投資フォーラムの発表数値を紹介したが
入稿後に投資信託協会から投資信託に絞った投資残高が発表された。
公募・私募合計の純資産総額は38兆1,795億円でファンドの本数は2,034本。
ただし私の考えは記事内でも触れたとおり、
「そもそもすべての企業がESGに該当する側面を持っている。ゆえにどのような観点で投資先企業を良いと判断したのか、顧客に伝える努力をしない限り、それはESG投資とは言えないのではないだろうか?」
よって運用会社が独りよがりで申告したファンドの本数は、
私たち個人投資家にとっては何の参考にもならない。
投資に値するESG関連の投信の抽出条件
投資に値するESG関連の投信があるか抽出した際の3条件
- ESG投資の注目が高まった直近3年で純資産総額が縮小傾向ではない
- 販売会社主導による預かり残高の急増がない(=手数料稼ぎの使い捨て商品ではない)
- 月次報告書などで投資先の選定根拠が明示されている
のうち2番目について補足。
言い回しの修正
はっきりと証拠がつかめる訳ではないので、
「販売会社主導が疑われる純資産総額の急増」
という表現の方がよかったかなというのがます第一点。
※用語も統一して「預かり残高→純資産総額」とすべきだった。
販売会社に振り回されるファンドはインデックスに勝てない
次になぜこれがダメなのかというと、
アクティブファンドがインデックスに負ける背景として、
- 販売会社主導で多くのファンドが新規設定時や相場上昇時にだけファンドへ資金が流入し、 相場全体が下落した時は資金が流出する。
- よって運用資産における株式の割合を高く設定していることが多いため、株価が高い時に投資し、株価が安いときには売却することになる。
が考えられ、
このように投資資金が不安定な土台ではまともな運用ができない。
また販売会社が旬のテーマ商品として販売に力を入れた商品は、
手数料稼ぎのため2~3年後に買い換えを勧める習慣があるため、
長期保有を目的とする個人投資家は手を出してはならない。
販売会社の影響が疑われる具体的なファンド
最後に紙面の都合上、個別のファンド名は出さなかったが、
検証する中で不自然な純資産総額の急増が見られたのは、
- 女性活躍応援ファンド(大和証券投資信託委託)
- 世界インパクト投資ファンド(大和住銀投信投資顧問)
特に女性活躍応援ファンドについては、
2015年3月の設定から約2年は10億円未満の運用規模だったものが、
そこから2年半で50倍近くになるなんて、運用の体制が間に合う訳がない。
ファンドのサイズが小さかった頃はTOPIXを大幅に上回っていたが、
やはり急拡大後はTOPIXとほぼ同じか、下回る成績に落ち込んでいる。
もったいないことをした。。。
世界インパクト投資ファンドについては、
実際にはアメリカの独立系投信会社の運用しているので、
日本からの資金流出入による運用への影響は軽微と思われるが。。。
それでも2~3年の使い捨てで販売された疑いがあるものに、
自分のお金を預けることができるだろうか?
損保ジャパン・グリーン・オープンは悪くないが…
今回は紙面の都合上「結い2101」との比較で、
ダメだしする形になってしまった「損保ジャパン・グリーン・オープン」。
しかしこのファンドにはESGという言葉もなかった1999年より続く実績があり、
同時期に設定された「日興エコファンド」と比較をすれば、
真面目に情報開示がされていることは以前紹介した。
日興エコファンドは設定後半年で純資産総額が1,400億円になったが、
現在は100億円を切っている、先に書いたような使い捨て商品の先例。
「エコブーム」の時期に設定されたファンドを総括すると、
- 情報開示がほとんどないまま日本の大企業が投資先上位に並び、高コストのインデックスファンドにしか見えない。
- ゆえに販売戦略のために「エコ」や「環境」を掲げただけで、顧客から販売手数料を稼ぐためだけの商品だったのでは?
このような悪しきファンドの仲間ではなかったことを20年で示した、
損保ジャパン・グリーン・オープンは評価されてしかるべき。
しかし同じ20年の間に大手金融グルーブに属さない独立系運用会社が、
顧客に対して積極的に情報開示をし、投資哲学を共有するスタイルを切り拓いた。
社会性を謳うファンドであれば、この動きに追随するべきではないだろうか?
最後に記事内では純資産総額50億円以上で検討したため漏れたが、
10億円以上まで緩和すると、情報開示の質に優れたファンドが2つある。
- 朝日ライフSRI社会貢献ファンド(朝日ライフam)
- スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(スパークスam)
これについては過去に検証した記事を参考にしてほしい。
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