マイケル・キーン&ジョエル・スレムロッド「課税と脱税の経済史」。
- 第9章の税金を逃れるための笑える創意工夫
- 第11章の大企業の租税回避行為の歴史
のあたりの記述がおもしろかった。
持ち運びできない建物は、昔から課税対象とされてきた。
家の間口や正面の窓の数を基準にすることが多かったため、
その名残としてヘンテコな建物が世界各地に残っている。
間口をできる限り小さく、縦や奥に細長い建物。
京町家に残る「うなぎの寝床」もこの一種と言われる。
- 江戸時代の税は間口幅で決められたと聞きました。詳しい資料を紹介してください。(レファレンス共同データベース)
このほかの税金逃れの例として本書で紹介されているのは、
- ギリシアでは未完成の建物は60%の税額控除が適用→作りかけの建物が増加中
- ガラスの重量に課税がされた18世紀に、薄いガラスで中が空洞の凝ったデザインのグラスが登場
- 発泡酒、第三のビールと酒税とイタチごっこの日本のビールメーカー
- 利払いを経費にできるが、株主資本に繰入可能な偶発転換社債(CoCo債)
現在進行系の税金逃れには、能力の無駄遣いとあきれてしまうが、
過去の遺物となると、その創造性に感心してしまうのが不思議。
また国際的な租税回避行為、とくにデジタルサービス課税に対する、
税制対応作として議論されている案で興味深かったのが、
仕向地主義キャッシュフロー法人税“Destination-based cash flow tax”
- ユーザー貢献(提供されたデータを基に広告表示等)が発生している法域、顧客が居住している法域に課税権を配分する。
- 多国籍企業が租税回避地に拠点を移しても、ある法域で販売さえすれば納税義務が生じる。
とてもいい考え方だと思うけど、以前より国際協調が難しい時代なので、
実現するかどうかは未知数だよね。
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