秘すれば花と不足の美-風姿花伝・茶の本・徒然草

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能の大成者、世阿弥が書いた、能の理論書「風姿花伝」。
内容は能楽論にとどまらず、日本の美学・美意識を知る上で重要な一冊。

専門家じゃないから分からないけど、1400~20年頃に書かれていて、
それ以前の中国や、同時期のルネサンスに芸術論の本が見当たらないから、
もしかすると、世界で初めての芸術論なのかもしれない。

そんな「風姿花伝」の花伝第七・別紙口伝から2つ引用して。

花と、面白きと、めづらしきと、これ三つは同じ心なり。

秘する花を知る事。秘すれば花なり秘せずは花なるべからずとなり。この分け目を知る事、肝要の花なり。

もちろん、能を語る中で現れる一文だけど、視点を変えると違う光景が見える。

たとえば、好意を寄せる人のことは、なんでも知りたい、と願うもの。
でも、会うたびに、新しい側面や意外な素顔が分かる方が楽しいのでは?
お互い分からない部分はそのままで、ちょっとずつ理解しあうのがいいのかも。

自分は単調でつまらない人間だからダメだこりゃ、なんてあきらめたりせず、
常に新しいものに興味を持って、自分の中に「秘する花」を育てたいもの。


もしかすると、こういうのも日本的な美意識の一つなのかな。
日本独特の遊び心に「不足の美」がある。代表的な名著から拾うと、

岡倉天心茶の本
It is essentially a workship of the Imperfect, as it is a tender attempt to accomplish something possible in this impossible thing we know as life.
(茶道の本質は不完全なものへの崇拝で、人生って不可能なものの中で何か可能なものを成し遂げようとする繊細な試みなんだ。)

徒然草・第八十二段
すべて、何も皆、事のととのほりたるは悪しきことなり。し残したるを、さてうち置きたるは、おもしろく、生き延ぶるわざなり。
(何事においても完璧はよくなくて、やり残しがあった方が味わい深い。)

あえて未完の状態にして、秘密があるかのように見せるのも、秘する花。


世阿弥「風姿花伝」のお薦め本。原文・現代語訳・解説がセットで読みやすい。

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