春は曙、夏は夜、秋は夕暮れ、冬は早朝。。。
清少納言の「枕草子」はこんな調子で「好み」の紹介が多い。
自らお題を出して、鋭い観察眼でそれに応える軽妙な筆運び。
他の日本の三大随筆「徒然草」「方丈記」とは違い、全体的に明るい。
でも、仕えていた中宮定子が藤原道長の台頭で没落してしまったり、
そもそも宮仕えは窮屈だから、兼好や長明より重い人生だっただろう。
枕草子は不運にめげずに前を向こうとした記録、と読めるかもしれない。
「ちひさきものはみなうつくし」(151段)
幼な子、人形の道具箱、蓮の小さな浮葉、ひよこ、瑠璃の壺などなど、
身の回りにある日常のものに「いとうつくし」と喜びを見いだす。
気がつきさえすれば、小さな幸せは常に目の前にあるものなのだ。
「萩などのいとおもげなりつるに、露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬに、ふと上樣へあがりたる、いみじういとをかしといひたること人の心地には、つゆをかしからじと思ふこそ又をかしけれ。」(130段)
雨上がりに雨露の重みでしなった萩を眺める清少納言。
露が落ちた瞬間に枝が跳ね上がる様子は「いみじういとをかし」だけど、
「こんな感覚、誰にも分かってもらえないわね」と思うのも「をかし」。
私の小さな幸せなんて分かってくれなくていいの、と笑い飛ばす潔さ。
「幸福論」という切り口で読み直すと、女性の強さを再認識する一冊かな。
コメント
はじめまして。
ブログよく拝見してます。
清少納言、高校生の時以来です。
こんな見方があったのかと目から鱗でした!
身近な自然に美しさを感じられる幸福。
私は投資の世界をとことん追いかけて、MBAまで取ったり…。そうして欧米的なものに触れる過程で、日本にこだわらなければいけないような切迫感・焦燥感に襲われて、日本文化の研究をはじめました。
多くの方に日本の面白さを伝えたい! そんな想いを胸に、いろんな切り口で日本の編集を試みています。
ただ投資の記事を書いていた頃と比べると、反響が少なく寂しい状態なので(笑)、このコメントはすごく嬉しいです。心から感謝です♪