ジークムント・フロイト。
彼が無意識や心理的な葛藤を人間観察の中心に持ってきたことで、
以後、精神医学や心理学、さらには脳科学へと研究が広がった。
こんな業績を残した人だろうか。
著作を読んでみようと思い「幻想の未来」 という論文と出会った。
確率・統計で偶然を飼いならし、未来をリスク管理しようしたことが、
現代の諸問題の根底にあると考える私には大好物の一節が…
フロイトは以下3つの理由から「未来予測に価値はない」と説く。
1.人間の営みをそのすべての広がりにおいて展望することのできる人はごくわずかだということにある。多くの人にとっては、一つあるいはごく少数の分野だけに考察を限らざるをえないのである。さらに過去と現在についての知識が限られていると、未来についての判断も不確実なものと成らざるをえない。
何度か紹介してきた「ラプラスの悪魔」の焼き直しだ。
そして私たちにこの知性の限界が存在するからこそ、
未来予測に対してはデカルトの論理的思考法は通用しない。
2.未来についての判断において、個人の主観的な期待がはたす役割を評価するのは困難である。このような個人的な期待は、その人に固有な経験の純粋に個人的な側面や、人生に対する多かれ少なかれ希望的な見方によって決まるものである。気質とか、人生における成功や失敗などによって、それぞれの人ごとに決まっているものなのだ。
これがフロイトに特徴的なのかな。
これまで歩んだ人生が無意識のうちに判断に影響するから、
未来予測は客観的なものになりえない、ってことだ。
3.人間は一般に時間をただ素朴に生きているだけであって、その内容を正しく評価することができないという注目すべき事実がある。未来について判断するためには、現在と距離をとり、現在を過去にしなければならないのである。
そして私たちは時の流れを正しく判断することができない。
先ばかりに囚われて、今この時の大切さを忘れてしまったり、
ふいに美しいものに出会うと時の流れを外れてしまったり…
時の扱いはホントよく分からんですな。
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