江頭憲治郎&上村達男 両教授の講演メモ

まずお断りから。私は学問としての法律に関してはまったくのド素人。
法人の定款作成や株価の裁判を体験し、会社法についてわずかな知識がある程度。
ちなみに学生時代、上村先生の授業の成績は「可」だった(笑)
そんな私が両教授の話を聴いたら、こんな感じになりました、ってもの。


まずは江頭先生の、30年前に書いた論文「会社法人格否認の法理」が、
最近若手の法学者に批判され、もう一度検討し直した、という話から。

法人格否認の法理?なにそれ?と言うのは、法学部卒としては恥みたいだが…
債権者保護の観点から株主の有限責任を否定する最高裁判決があるみたい。

この時の判決文がモヤモヤしてたから、江頭先生が理論的に証明した論文のようだ。
株主が個人で背負うべきリスクを会社に移転し、会社への出資額も少ない、
そんな状態で会社が倒産したら、株主が会社の債務に対して責任を負うべき、
という論文みたい。なんだか税務署のような発想が裁判官にもあるなんて意外。
中小企業なんだから、株主・社長・会社は一体だろうみたいな考え方。

この論文に対し、株主の会社への出資がいくらだったら少ないの?
基準がないからおかしくない?って経済学的なアプローチで批判がされたそうな。
江頭先生はなるほど、と考え直すきっかけにしたけど、上村先生はこれに怒る。

上村先生は法廷に経済学を持ち込むことに拒否反応を起こす人。
ブルドックソース事件のときに結局提出しなかった意見書にもそれが現れてた。
なんでそういう考えをするのか、ちょっと分かりそうな欧米との比較の話が2つ。

1.アメリカでは経済学者に何を言われても、連邦最高裁がブレることはないが、日本はマスコミが騒いだりすると影響を受けてしまう
2.法人を人として扱うと、個人の尊重と対立してしまう。欧米はここに苦悩しながら会社法を作り上げてきた。日本はこれまで真剣に考えてこなかった部分。

そうか、法律家から見ると「経済学=人の行動を扱うもの」なんだ。
たしかに経済学に「組織」って考えができて、100年も経ってないと思う。
1991年にノーベル賞をもらった、ロナルド・コース教授が最初だもんね。

江頭先生は、欧米との比較を言うなら一番の違いは、株主の捉え方だと指摘。
イギリスでは、田舎に住む投資家の貴族は尊敬されるが、
日本では総理大臣が、田舎で株やってたらインチキ臭い、と言ってしまう。
法律だけの問題ではなく、社会全体の問題として考えていかなければならない。

続いて、江頭先生の現在の研究のもう一つ。
役員等の連帯債務と免除の絶対的効力」について紹介があった。

法学会では会社法427条の社外取締役等の責任限定契約の法的効力が争点。
損害が出たとき、社外役員の責任はいくらまで、と定款に定めることができるんだ。
でも会社法430条の役員の連帯責任、さらには民法432条の連帯債務と絡んで、
商法学者と民法学者が対立しているんだって。

江頭先生の意見としては、(これが私には少し意味が分からなかったのだが)
役員等の損害賠償責任を定めた会社法429条の事件が起きるのは、
中小企業だから絶対的効力と考えてOKとのことだった。
絶対的効力って、責任限定契約がついてても連帯責任を負うってこと??

最後に今後の研究について江頭先生から。
会社法研究の対象は、
 1.ガバナンス、2.ファイナンス、3.M&A、4.閉鎖的な会社
の4つに分類できるが、一番重要なのは「閉鎖的な会社」
また、研究の方法論として、江頭先生が師匠の言葉を紹介。
良き法律家は歴史が好きか、幾何が好きか
今後は統計学も学んで、法学に生かしていく必要があるかもしれない。

※江頭教授の「株式会社法(第2版)」の改訂版が近刊らしい