花鳥風月の来歴。杜甫の春望からはじまった?

花鳥風月
日本の風物を表す代表的な言葉として誰もが知っている。
ところで起源はどこにあるのか?

中国、唐・玄宗皇帝の時代(712~756年)、
天下の美女を選ぶために派遣した使者を「花鳥の使」と呼んだ。
日本には男女の仲立ちを表す言葉として伝わり、
古今和歌集(905年)の真名序では「和歌=花鳥の使い」。

好色の家には、此を以ちて花鳥の使いとなし…

でも真名序(漢文)のこの部分、仮名序(和文)では削除された。
中国と日本の花鳥感覚の差を表そうとしたのだろうか。

たしかに当時の花鳥風月にあでやかさは見られない。
咲き誇る花はやがて散り、満ちた月もやがてはかけるもの…
日本の花鳥風月は人生の悲哀を移す情景美だった
のだ。
ここでもう一度、中国を振り返ると、杜甫の「春望」が目に止まる。

國破山河在 (国破れて山河在り)
城春草木深 (城春にして草木深し)
感時花濺涙 (時に感じては花にも涙を濺ぎ)
恨別鳥驚心 (別れを恨みては鳥にも心を驚かす)
烽火連三月 (烽火 三月に連なり)
家書抵萬金 (家書 万金に抵る)
白頭掻更短 (白頭掻けば更に短く)
渾欲不勝簪 (渾て簪に勝えざらんと欲す)

「花鳥の使」と同じく玄宗皇帝時代の安禄山の乱(755~763年)で、
国の荒廃への哀しみを花や鳥とともに詠った、超有名な漢詩。

菅原道真が和歌を漢詩に訳そうとしたぐらいだから、
漢詩に詠われた想いを和歌が引き継いでいてもおかしくはない。
だから日本の花鳥風月の起源は、杜甫の春望かもしれないね。

コメント

  1. 通りすがり より:

    私はこの頃、漢詩をかじるようになったばかりなのであまり漢詩に詳しくありませんが、春望はすごくいい詩ですよね。花鳥風月というテーマからはそれてしまいますが、その他杜甫の詩では『江亭』も好きです。
    春暁で知られる孟浩然の『王侍御に留別す』の
    「知音は世に稀なるところ 祇だ応に索莫を守って 還た故園の扉を掩ざさん」というフレーズも好きです。
    漢文調というと硬質な響きがその特長として挙げられますが、漢詩にはそうした武骨というか力強さを感じさせる詩ばかりでなく、すごく繊細な気持ちを詠んだものや哀しみを訴えるものも少なくなくて、読んでいてため息がもれてしまうこともままあります。
    「唐土とこの国とは、言異なるものなれど、月の影は同じことなるべければ、人の心も同じことにやあらん」という貫之の言葉が思い出されます。
    私は中国共産党は嫌いだし、現在、日本と中国は揉めていてややこしいことになっていますが、文化に触れたり歴史を学ぶと中国という国を憎む気にはなれませんね。

  2. まろ@管理人 より:

    漢詩の本って何かオススメありませんか?
    なんかこう、おもしろく読み進めるものがなくて、私もほとんど知らないんですよ。杜甫の「春望」は高校生の時、漢文で習ったから知っている程度。。。
    日本が尊敬していた中国はどこかへ行ってしまったけど
    http://www.pixy10.org/archives/17636213.html
    日本がこれまでグローバルなものとどう向き合ってきたのか?と考えると、やはり中国との関係を読み解くことになるわけで…。そうすると、ものすごく残念ですよね。1000年単位で捉えると、中国の歴史は下り坂。。。
    貫之は「土佐日記」の阿倍仲麻呂のくだりですね。
    私が最初に暗記できた百人一首は「三笠の山に いでし月かも」でした。

  3. 通りすがり より:

    私が今読んでいるのは一海知義氏の「漢詩一日一首」(平凡社)です。春、夏、秋、冬の四つに分冊されているのですべて揃えると少し値段がはってしまうのが難でしょうか。
    「漢詩を味わう」(林田愼之助氏、日経プレミアシリーズ)は一日一首がまだ読み終わらないので、恥ずかしながら積んだままになっています。
    NHKカルチャーラジオ「漢詩をよむ」のテキストも買ってますが、こちらはあまりピンときませんでした。
    岩波文庫のものは書店で中身をパラパラ見てみましたが、堅苦しさを感じて私にはあいませんでした。
    奇遇ですね。仲麻呂の歌、私も小学校で百人一首を習ったときから一番すきでした。遣唐使は唐に旅立つ前に春日大社で旅の無事を祈念したことから、単に故郷を懐かしむだけでなく、唐に渡る前の若かりし頃を懐かしんでもいるとかいないとか。最近それを知って、一層好きになりました。(笑)
    興味のあるところから枝葉を伸ばすようにしていくのもありかもしれませんね。例えば安倍仲麻呂は唐で李白や王維と交流があったようですから、李白や王維に的を絞って漢詩を読んでいくとか。

  4. まろ@管理人 より:

    さっそく本屋に行ってみたものの、地元の紀伊国屋は古典のコーナーが少なくてなんとも。すぐに市場から消える、中身空っぽのビジネス書に多くのスペースを割いているのに…。
    NHKカルチャーラジオ「漢詩をよむ」と同じ作者かな、宇野直人さんって方の対話形式で漢詩の解説をしている「漢詩を読む」って題の4分冊だけ置いてあって、分かりやすそうな雰囲気でした。
    全部買うと8,000円…、うーん。。。とりあえず図書館で借りてみようかな。

  5. コマさん より:

    春望を書いた杜甫はどんな気持ちか考える