プーチン時代のロシアの地政学の指針をつくった、
アレクサンドル・ドゥーギン(1962~)という人物がいるらしい。
今回のウクライナ侵略関連の記事で名前を見かけるが、
その代表的な著作「地政学の基礎」(1997)は日本語訳がなく、
どんな世界観が示されているのか分からない。
北岡伸一・細谷雄一 編「新しい地政学」の中に、
その内容の断片を見つけたのでメモ。
ドゥーギンがロシアの地政学上、最大の課題と説いているのは、
全ヨーロッパ諸国を「フィンランド化」することだという。
フィンランドは冷戦時代に国際的な中立の立場をとり、
自由民主主義を採用しながらソ連に対抗の意思を示さず、
西側世界からは共産主義勢力とみなされていた。
つまりドューギンの理想は、ヨーロッパが政治経済体制は現状のまま、
NATOを脱退して軍事的に中立となり、ロシアの影響下に置かれること。
そのほか目に留まった主張を箇条書きしておくと、
- ウクライナがロシアの緩衝地帯にならないのであれば、その独立は認められるべきではない。
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ヨーロッパ諸国(とくに中東欧諸国+バルト三国)に影響を及ぼすために、ドイツとの協力関係が不可欠。
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中東、コーカサス、中央アジアを影響下におくためにイランと結び、トルコ・アゼルバイジャンを解体し、ロシア、イラン、アルメニアの三ヵ国で分割したい。
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日本へ北方領土を返還し、友好ムードを醸成するとともに反米主義をあおり、アメリカに変わってロシアが日本政府を操作すべき。
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中国の存在を危険視。チベット・ウイグル・モンゴル・満州をロシアにとっての対中緩衝地帯にすべき。
ウクライナ、ドイツ、コーカサス(ジョージア)あたりの話は、
たしかにドゥーギンの構想とプーチンの動きが重なるように思える。
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