東アジアの地政学を学ぶ

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岡本行夫「日本にとって最大の危機とは?」を読んだのを機に、
東アジアの地政学を学んでおきたいなと思い、とりあえず以下の2冊を読んだ。

どちらの本の表紙にも普段目にする地図が反対になっており、
中国、ロシア、朝鮮にとって、日本列島は邪魔な落とし蓋であることが分かる。

地政学では国家を「シーパワー」と「ランドパワー」の2つに分類

  • シーパワー(=海洋国家)…海軍志向で経済合理性重視
  • ランドパワー(=大陸国家)…陸軍志向でイデオロギー重視(経済の論理より政治の論理)

同じ国でも、シーパワーを志向する時代と、ランドパワーを志向する時代があり、
たとえば20世紀以降のアメリカは、

  • 共和党政権…ランドパワー(一国孤立を志向)
  • 民主党政権…シーパワー(沿岸の都市部に支持層。世界の警察官を志向)

というような傾向がある。

トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト」は、
シーパワーからランドパワーへの転換を宣言したものといえる。

中国は歴史上に東アジア最大のランドパワー帝国。
「中華」の威厳を保つためなら、経済合理性を軽視する傾向がある。

現在の「一帯一路」はシーパワー化を目指す政策だが、
かつての失敗例、明代の鄭和の南海遠征に酷似しているのでは?

鄭和艦隊は巨大な商船隊で、陶磁器・絹織物を積んで、
東南アジア・インドの各港を訪問する朝貢を促すための移動見本市。
帝国の威光が世界に広がれば広がるほど、バラマキによる財政難が深刻に。
公的な貿易の規模が縮小したことで、密貿易や北方侵略が増加していく。

中国の歴史は、それぞれの王朝が中華の栄光を誇り、
その体制を維持するための政策に固執することで、国力が弱体化、
やがて次の王朝に滅ぼされる、という繰り返しに特徴がある。
はたして習近平はこの歴史から逃れられるのか?

中国のシーパワー化に対抗するための「自由で開かれたインド太平洋戦略」。
日本が戦後初めて、外交の物差し作りに成功しつつある構想らしい。
原点は2012年に第二次安倍内閣発足直後に英文で発表された

“The ongoing disputes in the East China Sea and the South China Sea mean that Japan’s top foreign-policy priority must be to expand the country’s strategic horizons. Japan is a mature maritime democracy, and its choice of close partners should reflect that fact. I envisage a strategy whereby Australia, India, Japan, and the US state of Hawaii form a diamond to safeguard the maritime commons stretching from the Indian Ocean region to the western Pacific.”

オーストラリア、インド、日本、ハワイを結んだダイヤモンドを形成し、
インド洋から西太平洋の海洋貿易を中国から守ろうという構想。
第一次安倍内閣の2007年からインドとの関係を強化していたようで、
安倍内閣は安全保障の面で良い仕事をしていたことを知るのだった。

ちなみに自由で開かれたインド太平洋戦略については、
今日発表の「令和3年度版防衛白書」にも大きく載っていた。

最後に朝鮮半島の今後を考える上で興味深い記述をふたつほど。

  • 現在の韓国はEUにおけるギリシアの立ち位置と似ている?(冷戦期に最前線の役割→軍事政権時代からの民主化→米国との関係悪化→ばらまき政策で財政悪化→戦時賠償の要求)
  • 統一朝鮮では北朝鮮の金一族が、民族の象徴として存続する?(日本の天皇のような位置づけに?)

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