この宇宙で「エントロピー増大の法則」に逆らえる存在はない。
この法則を経済現象に当てはめて、富が生まれる源泉を説いた、
長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」になるほど!だった。
今度は矢野和男「予測不能の時代」で格差問題を説いた記述に出会い、
他分野からの解説にあらたな気付きを得られることはしばしば。
世界の多様な経済取引を、新たな資源配分を探索する営みとするならば、
すでに探索した可能性の領域の大きさであるエントロピーを常に増大させる。
「ある空間の中の分子を考えるとき、すべての分子が同じ速さで動いている状態よりも、それぞれの分子が多様な速さで動いている状態の方が、探索できる可能性の領域はずっと広い。このため、各分子の速さについていえば、エントロピーが増えると言うことは、各分子の速さがどんどん多様になることを意味する。各分子の速さがどんどん多様になるということは、分子の速さに大きな格差が生まれるということだ。このようにして格差は自然に増えてしまう。」
そしてトランプの「大富豪・大貧民」のゲームのように、
社会には勝者優遇のルールが組み込まれており、
それがエントロピー増大の法則の効果を何重にも増幅させる。
「極端な格差には理由はない。あえて理由を説明すれば、世界が新たな可能性を常に探索すること(すなわち、エントロピーが常に増大していること)が必然的に生む格差が、この社会の因果応報によって何重にも増幅されることである。いずれもこの世の基本的な理であり、自然なことだ。」
ゆえに意識的に行動しなければ「平等」に近づけることはできず、
また「自由」と「平等」は同時に実現できるものではないと説く。
思えば私たち生命も「負エントロピーを食べて生きている」と称される。
自ら崩壊し続ける一方で、他の生物を食べて消化し、補完することで、
エントロピー増大の法則の摂理に逆らって、生きながらえている。
つまり法則によって壊されるよりも速く、自らを壊して作り替えている。
資本主義にもこうした仕組みが必要ということだろうか。
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