大恐慌が長引いた原因/ガルブレイス「大暴落1929」

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ウォーレン・バフェットの警告

5月のバークシャー・ハザウェイの株主総会で、
ウォーレン・バフェットが1929年の大暴落後の株価の動きに言及。

  • 1929年10月に大暴落した株価は、その後9カ月半でいったん20%近く回復。
  • しかしその後2年間で1929年9月3日のピークから83%下落。
  • 1929年のピークを越える水準に戻るまで20年以上かかった。

株式に投資するなら50%以上の株価の上下を覚悟せよ、と警告していた。

2008年の金融危機の時はリーマン・ブラザーズ破綻から1ヶ月後に、

Buy American. I am.

というタイトルでニューヨークタイムズに寄稿していたバフェットだが、
あの頃に比べて今回はずいぶん弱気なのが、少しひっかかっている。

今のところ株価は3月の暴落から回復したこともあり、
バフェットの警告を忘れそうなので、その後調べたことをメモ。

ダウ平均の推移 1928~1958年

まず当時の株価の推移を振り返ると(ダウ平均を年足チャートで)、

たしかに1929年の高値358.77ドルを超えるのは1955年に入ってから。

しかしなぜこんなにも不況が長引いてしまったのか?

ジョン・ケネス・ガルブレイス「大暴落1929」

恐慌が長引いた要因

ジョン・ケネス・ガルブレイスは名著「大暴落1929」のなかで、
恐慌が長引いたことと関係が深かった要因として次の5つをあげている。

  1. 所得分配
  2. 企業構造
  3. 銀行システム
  4. 対外収支
  5. 専門家の経済知識

所得分配

  • 総人口の5%にすぎない最高所得層が個人所得総額の約3分の1を手にしていた。
  • 所得分配が偏っていると、経済は高所得層による投資や贅沢品の消費への依存度が高くなる。
  • 高所得層の支出は、労働者がパンや家賃に充てる支出に比べれば、株価暴落のの影響を受けやすく、はるかに変動が大きい。

企業構造

  • 下流の事業会社から支払われる配当を、上流の持株会社が発行した社債の利払いに充てる経営形態が拡大していた。
  • 配当が止まれば、社債は利払い不能となり、破綻に至る。ゆえに工場設備への投資を犠牲にしてでも配当を継続しようとする。
  • 設備投資の縮小はデフレ圧力を一段と増大し、デフレ・スパイラルを長引かせ、深刻化した。

銀行システム

  • 当時は経営基盤が脆弱な銀行が多数存在し、取り付け騒ぎで次々と倒産した。
  • 銀行システムが破綻の連鎖を起こすと、預金者の消費支出や企業の投資は大幅に縮小する。

対外収支

  • アメリカは第1次世界大戦中に「対外純債権国」に転じた。
  • 債務国はアメリカの金融機関に国債を引き受けてもらって返済に充てていた。
  • 債務国は対米貿易赤字を解消しようとしたが、フーバー大統領が関税を引きあげ、輸入を制限したため、債務国の国債は次々とデフォルトに陥った。

専門家の経済知識

  • 大恐慌下にあって、財政均衡を強く主張する経済顧問、インフレを懸念する学者…。
  • 財政政策(増税、政府支出の増加)もダメ、金融政策(利下げ)もダメとなれば、政府は打つ手を全て封じられた。

1929年の大恐慌に学ぶべき教訓

「将来は予測可能だと思い上がった人ほど悲惨な末路をたどった。」

「かつてそうだったように現在も、金融上の判断と政治上の配慮は逆方向に働く。長期的に見れば経済を救う措置でも、現在の安寧と秩序を乱すものなら評価されない。だから、たとえ将来に禍根を残すとしても、今は何もしないでおこう、ということになる。・・・このような考え方に陥るからこそ、事態が悪化していると知りながら、人は、あの言葉を口にするのだ ――状況は基本的に健全である、と。」 

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