「黄」の佐保山と「紅」の竜田川。古今集・紅葉の和歌

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「もみじ」に当てられた漢字が「黄葉」から「紅葉」へ変わり、

和歌に詠われるイメージも変わることを書いた。

これを頭に入れた上で、古今和歌集の秋の歌を読むと、

佐保山と竜田川のもみじの色に違いがあるように思える。

平城京との位置関係を簡単に図解すると以下の通りで、

五行説に基づけば竜田山の方が秋にふさわしいことになるだろうか。

ちなみに古今集では秋といえば西と詠った和歌もある。

おなじえを わきてこのはの うつろふは 

西こそ秋の はじめなりけれ

佐保山のもみじ

たがための 錦なればか 秋露の 

佐保の山辺を たちかくすらむ

秋露は 今朝はな立ちそ 佐保山の 

ははそのもみぢよそ にても見む

佐保山の ははその色は うすけれど 

秋は深くも なりにけるかな

佐保山の ははそのもみぢ 散りぬべみ 

夜さへ見よと 照らす月影

1首目には「錦」とあるが、残り3首は「
ははそ(柞)」。

柞はクヌギやコナラのことを指すそうだから、

葉の色づきは赤というよりも黄色に近い。

ただし詠まれた歌に万葉集のような暗さはない。

竜田川のもみじ

竜田川 紅葉乱れて 流るめり 

渡らば錦 中や絶えなむ

竜田川 もみぢ葉流る 神奈備の 

三室の山に 時雨降るらし

もみぢ葉の 流れてとまる みなとには 

紅深き波や 立つらむ

ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 

からくれなゐに 水くくるとは

神奈備の 山を過ぎゆく 秋なれば 

竜田川にぞ ぬさはたむくる

もみぢ葉の 流れざりせば 竜田川 

水の秋をば たれか知らまし

年ごとに もみぢ葉流す 竜田川 

みなとや秋の とまりなるらむ

セットで詠まれた3首目と4首目が代表歌。

4首目は百人一首にも収録される在原業平の歌だ。

鮮やかな濃い紅色を指す「からくれなゐ(唐紅)」は、

現代の私たちが紅葉と呼ぶ、葉の色と同じものと言えるだろう。

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