日本の歴史上、最初の技術革新は扇子。(だと思ってる)
7世紀に中国から伝来した「うちわ」を8世紀頃、扇子に進化させた。
自動車やウォークマン、携帯電話をはじめとする産業製品から、
正月のおせち料理やお弁当といった食文化にいたるまで、
技術や物語をコンパクトに収める日本の伝統は扇子からはじまったのかも。
ところで扇子は、うちわを持ち運びやすくしただけのものだろうか?
扇子に折り込まれた物語を探して、ロマンティックな解釈をつけちゃお♪
室町時代最大の歌人と呼ばれる禅僧、正徹。
ちなみに現存する最古の「徒然草」の写本は正徹が残したものなんだよ。
そんな正徹の歌集「草根集」には、扇を詠った和歌が数多く残されている。
まずは10首ばかりピックアップして、ズラッと並べてみる。
山のはの 木をうこかせる 風涼し 扇をあけて 出つる月よに
形見をは ならす扇に のこし置きて かさなる山に 月そかくるる
一枝の花を そおける 夕かほの かきほの月の しろき扇に
月しろき 扇の色に 夏過きは 嶺の紅葉や つまをこかさん
人とはは かさなる山に かくるとも 扇にかける 月やこたへん
秋を引く 手にはならさす 涼しさを 月の扇の 風にまかせて
かはほりの 風よき閨に もる月の 影も扇の 色そ涼しき
涼しくも 今朝そ手ならす 夏のよの 雲のいつくの 月の扇を
かさしては 夏の日影そ へたて行く 秋風いたす 月の扇に
手にとらは 月をあけてや たとへまし おき忘れにし 秋の扇に
気がついたかな?
どの歌も扇子に月を映し込んでいるんだ。
桜、月、そして恋…。日本文化の形成にとりわけ重要だった3点セット。
もしも扇子の発明が、夜空の月にヒントを得たものだとしたら、
扇子を開く、畳むの動きは、月の満ち欠けを見立てたものかもしれない。
そして禅僧、正徹が扇に月を折り込んだ和歌を詠ったのは、
満ちては欠ける月に、世の中の、そして人生の無常を見いだし、
手にとれる月、扇子を愛したからかもしれない。
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