無文字社会の時代が長かった古代の日本では、
口から発する言葉に霊力が宿ると考えられていた。
言霊とはいったいどういうものだったのか?
古事記については以前まとめたとおり、
自分の名を知られた途端に相手の支配下におかれる、
といった用例が見られる。
またこのことから万葉集には、
蘆原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国…
といった一節も見られ、
むやみに言葉を発せずに霊力を養うのが大切。
無口で自己主張をしない日本人の原点だったりする。
言霊の 八十の巷に 夕占問ふ
占正に告る 妹はあひ寄らむ
これは万葉集の柿本人麻呂の和歌。
夕占(ゆうけ)とは、辻占(つじうら)のことで、
辻すなわち交差点で、行き交う人々の言葉を元に恋占い。
そんな慣習が描かれた一首。
交差点とは主に橋のことであり、橋は異界との境界。
ここは人だけでもなく神も通る場所だから、
偶然に神の言霊を拾える可能性があるという考え方。
江戸時代になると辻でおみくじが売られるようになり、
それをせんべいに入れた辻占煎餅が作られた。
恋するフォーチュンクッキーにはこんな由来があった。
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