リレー連載企画「本日のスープ~株式投資をめぐる三重奏~」。
m@さんからのご寄稿コラムです。
これまではrennyさんからご寄稿頂いていましたが、
ひとつ前の31皿目から逆回転をはじめたのです。
前回、rennyさんから若い会社が育っていくには時間が必要になることから、長期投資を謳うファンドが一定程度小さな会社に投資を行う事はできないか?という話がありました。(→31皿目)
まだ若い会社が成長のための資金を調達しようとした際、銀行などから借り入れをしようとしてもまだ業績不足でなかなか借りることができません。実績が無い事に果敢に取り組む会社ほど資金調達が難しいのが現状です。
企業にとって設立当初の資金というのは(親族・友人からの出資を含む)自己資金と補助金、そしてエンジェルと呼ばれる企業家を支援する投資家によるものが中心になりますが、ある程度事業が形になってくると国や地方自治体による制度金融による融資、更に進むとベンチャーキャピタルによる出資、株式市場への上場と徐々に会社の規模とともに資金調達の手段が変わっていきます。
本当に苦しいのは上場に至る前の段階なのですが、2005年に中小企業庁がまとめた企業の生存率(→こちら)を見ると1年後に生き残っている会社は80%、3年後に90%、5年後に92%、10年後に93%となっており、設立から5年以内が特に苦しい時期なのがわかります。このように社歴の若い会社は先行きが不透明で気軽に出資できるものではありません。
上場前の若い会社に一般個人がお金を出す事はこれまで難しかったのですが、最近ではクラウドファンディングやマイクロ投資と呼ばれる個人から少額ずつ広く集める方法が広がりを見せていて、来年からは未上場株への出資もできるように法律ができました。制度面では徐々に選択肢が広がっていますが、まだまだ企業側の資金ニーズに応えきれていないのが現実です。
一方、上場後のある程度の規模まで成長した企業にとっても株主との付き合い方というのは頭の痛い問題です。上場することにより、様々な思惑を持った株主が生まれることになり、じっくりと企業と歩みを共にしたいと考える株主もいれば、すぐに利益を出してほしい株主もいます。
ここでファンドにお願いしたいのはどのくらいの時間軸を持って投資しているのかを予め投資方針として表明して欲しいという事です。じっくりと企業と共に歩みたいと思っているのであれば、そういった投資家から腰の据わった資金を集めて欲しいですし、短期売買を繰り返したいと思っているのであれば、長期投資を思考する投資家にとってそのファンドはそもそも投資対象外となります。運用報告書を読み込むことである程度推測できる項目ではありますが、投資マニアではない人にとってもミスマッチが生じないように時間軸は表明して欲しいと思います。
今年から日本版スチュワードシップコードという制度が始まり、機関投資家にも中長期的な目線で投資先の企業と共に成長を目指して歩むことを求めるようになりました。株価は短期的には様々な要素の影響を受けますが5年、10年といった長い期間になればなるほど業績による影響が大きくなります。長期投資家は腰を据えて投資先の会社が成長できるよう力添えすることで共に成長の果実を享受できるのが理想形ではないでしょうか?
あすかアセットマネジメントでは運用会社でありながら経営コンサルタントのような企業の成長を応援する専門家がいて、経営助言に対するフィーは取らずに業績向上に伴う株価上昇で利益を享受するというスタイルのファンドも運用しています。公募投信で実現するには難しい面もあると思いますが、そんなファンドが公募投信であったら自分も買ってみたいなと思います。
投資をするのは値上がり益が目的というのはある意味当然だと思うのですが、その値上がり益はどこから生まれて来たの?とその背景にある企業の成長を意識できるような投信があると投信に投資していたとしても株主として役に立つことができたという気持ちになると思います。
個人で直接株式を購入していたとしても、現実問題としてあまりにも小口すぎて企業になかなか相手をしてもらえませんが、投信という形である程度の規模感があれば企業としてもしっかり対応をしてくれます。運用会社を間に挟んで企業と投資家がお互いリスペクトし合うそんな関係が築けるのが理想です。
以上を受けて、私が書いた次の一皿はこちら。
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