多様性は組織力向上ではなく危機回避のため?

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多様性(ダイバーシティ)が重要!と見聞きすることが多くなったが、
それとは真逆な研究結果を示す論文が、
池谷裕二「寝る脳は風邪はひかない」で紹介されていた。

多様な集団が同質な集団より賢くなくて当たり前」みたいな。

余談だが最近、翻訳ツールが劇的に進歩して、
GoogleやDeepLを使えば英語の論文も難なく読める時代になった。

さてこの論文のポイント部分を抜き出すと、

“In simulations and survey studies, we demonstrate three necessary conditions under which small socially diverse crowds can outperform socially homogeneous crowds: Social identity must predict judgment, the effect of social identity on judgment must be at least moderate in size, and the average estimates of the social groups in question must “bracket” the truth being judged.Seven survey studies suggest that these conditions are rarely met in real judgment tasks.”

多様な集団が均質な集団を上回るには3つの条件を満たす必要があるが、

  1. 社会的アイデンティティが判断の予測に役立つこと
  2. 社会的アイデンティティの判断への影響が中程度であること
  3. 社会集団の平均推定値が判断対象の真実を内包していること

現実の社会でこの条件が満たされることはほとんどない、と指摘している。
ゆえに多様な集団と同質な集団はそれほど変わらない。

多様性と同質性の議論で、いつも思い浮かぶのがサッカーのバルセロナ
下部組織から昇格した選手がトップチームに並んでいた時は最強だった。
とくに中盤の3人、シャビ、イニエスタ、ブスケスのサッカー観が同質だったから、
圧倒的に試合を支配することができ、さらにそこにメッシの得点力が加わった。

ではなぜ世間でこんなに多様性が叫ばれているのか?
池谷氏が救いの手を差し伸べるコメントをしている。

「集合知はさておき、多様性には別の利点があります。外部攪乱に対する「頑強性」を生み出すことです。逆に言えば、そうした有事の事態にならなければ多様性の恩恵はありません。となれば、「いつかの備え」としての多様性に投資するだけの体力があるかが一つの論点となるでしょう。」

たとえば独裁や全体主義のもとでは、危機の際に破滅的な意志決定をしてしまうことも。
でも多様な意見の上に成り立つ民主主義であれば、歯止めが効く可能性もある。
そんな落としどころになるのだろうか。

ロシアのウクライナ侵略を目の当たりにしたから、こう感じるのかもしれないが。

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