新日鉄の新株予約権付社債を斬る

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昨日紹介した新日鉄のこれ読んだ? パッと見て分からないでしょ?
まずはこの3,000億円の資金調達の内容を簡単にまめると。
1.ケイマン諸島に100%子会社設立(実態なしのペーパーカンパニー)
2.子会社向けに3,000億円の新株予約権付社債を発行
3.子会社が2の社債と交換できる権利のある優先出資証券3,000億円を銀行へ

実態としては新日鉄がみずほ、三井住友、三菱東京UFJの3社に、
新株予約権付社債を発行したのとまったく同じ。
ではなぜこのようなことを?
おそらくその理由は、連結会計を使ったトリックではないかと。

ヒントはこのリリース1ページ目下の方に、
「本交換付優先出資証券は子会社が行う資本調達であることから、
 連結バランスシート上においては少数株主持分として計上されます。」
つまり、普通に社債を発行したら負債の部に計上されるものが、
子会社を間に入れることで、連結B/Sの純資産の部に計上できてしまう

普通に第三者割当増資だと、既存株主に対する冒涜だと怒られるから、
遠まわしのシステムを作ったわけだ。新株予約権なら静かに株式へ変更されるしね。

また銀行側からみれば、新日鉄の社債を担保にした貸付けみたいなものだけど、
利息が2.228%(10ページ・Ⅱ-11)ってちょっと高くないかな?
こんな担保を取られて、この利率って中小企業でもないと思う。
オマケに新日鉄の株価が740円を超えたら(2ページ・Ⅰ-6)、
タダで新日鉄の株と交換して儲けることもできる(2ページ・Ⅰ-3)。
銀行に対するこの優遇っぷりは一体なんだ?株主よりも銀行が大事ってことか…。

さらに、リリース上で目的が買収防衛策である旨、はっきりさせていないのも不満。
ミタルが敵対的TOBとか仕掛けてきたら、自動的に銀行が株主に登場ってこと。
この新株予約権は、私には「パンドラの箱」に見える。
開かれてしまったら、過去へ逆流する銀行の波に飲み込まれ、
金融危機の再来で銀行とともに海底に沈んでいくことだろう。さらばだ、新日鉄。

コメント

  1. 空色 より:

    新株予約権付き社債というだけで十分イヤらしいのに、子会社を通じてってところが格好悪すぎです。
    これっていわゆる三角合併解禁対策ですよね。今後こうした事例が増えてくるのでしょうか。投資前の調査が更に面倒になりそうな予感・・
    ところで、簿記論の件、ありがとうございました。
    やはり教科書はないんですね・・