先月アシックスがサステナビリティボンドを発行。→ニュースリリース
日本政策投資銀行など金融機関が発行した例は見聞きしたことがあるが、
日本の一般事業会社ではアシックスが初めてになるそうだ。
しかし最近「○○ボンド」という名称の債券が乱立して何が何やら…。
要は「ESG投資の債券版」なのだろうが、何が違うのだろうか?
乱立する「○○ボンド」の定義
モヤモヤしていたところ、ちょうど今週GPIFからこんな発表があり、
いちおう国際資本市場協会(ICMA)の定義づけをしているらしい。
この定義ならサステナビリティボンドで一本化したほうがよい。
グリーンボンド
調達資金の全てが、新規又は既存の適格なグリーンプロジェクトの一部又は全部の初期投資又はリファイナンスのみに充当され、かつ、グリーンボンド原則の4つの核となる要素(1:調達資金の使途、2:プロジェクトの評価と選定のプロセス、3:調達資金の管理、4:レポーティング)に適合している様々な種類の債券
グリーンボンド原則2018(和訳)
https://www.icmagroup.org/assets/documents/Regulatory/Green-Bonds/Translations/2018/Japanese_GBP-2018-06.pdf
ソーシャルボンド
調達資金の全てが、新規又は既存の適格なソーシャルプロジェクトの一部又は全部の初期投資又はリファイナンスのみに充当され、かつ、ソーシャルボンド原則の4つの核となる要素(要素はグリーンボンドと同じ)に適合している様々な種類の債券
ソーシャルボンド原則2018(和訳)
https://www.icmagroup.org/assets/documents/Regulatory/Green-Bonds/Translations/2018/Japanese_SBP-2018-06.pdf
サステナビリティボンド
グリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクトの双方を意図するボンド
サステナビリティボンド・ガイドライン(英語)
https://www.icmagroup.org/green-social-and-sustainability-bonds/sustainability-bond-guidelines-sbg/
世界銀行・有馬良行氏のぼやき
昨日「RIアジア・ジャパン2019」の中で、この手の債券に関する話があり、
世界銀行の有馬良行氏がぼやいた内容が興味深かった。
- 投資家がプロジェクトのリスクを負わない限り、どのようなテーマの債券でも結局、通常の債券と変わらなくなるのでは?
- 発行体の立場では資金調達コストが安く抑えられるなら嬉しいが、投資家は通常の利回りを求める。発行体から社会的インパクトなどの情報提供が足りないのだろうか?
前者はつまり、投資家は発行体の倒産リスクを負っているだけで、
個々の事業リスクは発行体自身が負い、事業間のバランスの中で経営するのだから、
突き詰めると通常の債券と変わらないのではないか、という話だ。
ただここまで考えてしまうと、ミュージックセキュリティーズのような、
小規模な資金調達しかサステナビリティボンドと言えなくなってしまう。
今は普及をはかる段階と考えて、あまり細かい論点まで追求しない方がよさそう。
後者はかなり難しい問題だと思う。
情報開示が進めたからといって、機関投資家の支持を得られるのだろうか。
短期的にはリターンが減るが、長い目で見れば正しい投資判断、
という認識が社会全体で共有できなければ、
サステナブル投資でリターンを犠牲にするのは受託責任に反する、
みたいな論点が浮上してきてしまいそうだから。
コメント