ビジネスと生物多様性イニシアティブ

この記事は約4分で読めます。

来年10月に名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)がある。
この条約は、

1. Conservation of biological diversity (地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること)
2. Sustainable use of its components (生物資源を持続可能であるように利用すること)
3. Fair and equitable sharing of the benefits that arise out of the utilization of genetic resources (遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること)

を目的としたもの。(日本語訳は外務省ホームページから)
おそらく来年は「生物多様性への配慮」がキーワードになるんじゃないかな。
全世界の絶滅危惧種の数%は日本に生息してるみたいだし。→レッドリスト(WWF)

現在は地球にとって6度目の大量絶滅の時代らしく、
・土地の開墾により、人間が地球の光合成潜在能力の50%を占有
・ダムや灌漑設備により、人間が利用可能な河川の水を約60%を占有
・窒素固定により人間が窒素循環に介入し、窒素系科学薬品が河川を汚染
・人間が種子や動植物をたずさえて移住したため、外来種が従来の生態系に打撃
といった人間の活動が原因で、たとえば地球に生息していた全鳥類の25%が絶滅。
ジェフリー・サックス「地球全体を幸福にする経済学」より

なんで生物多様性に配慮しなきゃいけないの?と問われても、うまく答えられない。
ただ、ジャレド・ダイアモンド「文明崩壊」に示された、モアイのイースター島は、
森林破壊と食料となる動物種の絶滅させたことが原因で破局を迎えており、
文明の崩壊と生物多様性の破壊に関連があることが分かる。
温室効果ガス削減の努力だけでは、持続可能な地球の未来は得られないのだ。

国同士の話し合いはどーせまとまらないから、経済活動を担う企業に期待し、
また投資家として何らかのアクションを起こせるのでは?と考える今日この頃。
というわけで、生物多様性に絡んだこんなの見つけてきた。

ビジネスと生物多様性イニシアティブ・リーダーシップ宣言

2008年5月にドイツで生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)が行われた際、
ドイツ政府が民間企業にも署名を求めたのが、以下7ヵ条の宣言文。

1. Analyze corporate activities with regard to their impacts on biological diversity.(企業活動が生物多様性に与える影響について分析を行う)
2. Include the protection of biological diversity within their environmental management system, and develop biodiversity indicators.(企業の環境管理システムに生物多様性の保全を組み込み、生物多様性指標を作成する)
3. Appoint a responsible individual within the company to steer all activities in the biodiversity sector and report to the Management Board.(生物多様性活動の指揮を執り、役員会に報告を行う担当者を企業内で指名する)
4. Define realistic, measurable objectives that are monitored and adjusted every 2 to 3 years.(2~3年毎にモニターし、調整できるような現実的かつ測定可能な目標を設定する)
5. Publish activities and achievements in the biodiversity sector in the company’s annual, environmental, and/or corporate social responsibility report.(CSR報告書等にて、生物多様性部門におけるすべての活動と成果を公表する)
6. Inform suppliers about the company’s biodiversity objectives and integrate them accordingly.(生物多様性に関する目標を納入業者に通知し、納入業者の活動を企業の目標に合うように統合してゆく)
7. Explore the potential for cooperation with scientific institutions, non-governmental organizations (NGOs) and/or governmental institutions with the aim of deepening dialogue and continuously improve the corporate management system vis-a-vis the biodiversity domain.(対話を深め、引き続き改善してゆくために、科学機関やNGOとの協調を検討する)

この宣言に世界各国の34社が署名。日本企業は9社が署名し、うち上場企業は、
鹿島建設、住友信託銀行、積水ハウス、富士通、三井住友海上、リコーの6社。

来年は日本開催ということで、たぶん署名する日本企業がどっと増えるだろうけど、
一番最初に署名した企業との意識の差は明白。よーく覚えておきたい。

コメント