この本で著者が伝えたいメッセージは末尾に示される通り、
「マスメディアへのステレオタイプを鵜吞みにするな」
その世間一般の固定観念とその間違えをサクッとまとめると、
- テレビや新聞は偏向報道によって世論を扇動できる?
→ 人々の意見を変えるほどの影響力はなく、もともと持っている意見の強化する程度。この手の言説は認知的バイアスによる錯覚にすぎない。 - 情報源が多様化した現代ネット社会において、旧来のマスメディアは不要?
→ 個人の選好を強化、現実の認識を歪める可能性のあるネット社会において、社会で共有すべき現実を届ける役割を担うべき - ネットは自由な言論を可能にし民主主義を拡張する?
→ フィルターバブルにより自分と異なる意見を目にする機会が減り、集団極小化や社会的分断が促進されるリスクが高まる
2.と3.については、21世紀以後のインターネットへの期待と、
それが失望に変わったことを指摘する本が多く目新しさはない。
1.については、学術的な議論を初めて目にしたような気がする。
- 強力効果論(魔法の弾丸モデル)…メディアは世論を意のままに誘導できるとする説だが、現在では否定されている。
- 限定効果論…メディアの発信が人々の意見を「改変」することは稀であり、実際には受け手が元々持っている持論を再確認させ、それを強める「強化」するに過ぎないとする説。(1940~50年代の実証実験)
限定効果論の理論的背景に「認知的不協和理論」が挙げられていて納得。
人間は、自分の信念に合致する情報だけを好んで選び、
不都合な情報を無視または回避する性質を持っている。
仮にメディアが世論を操作しようと試みても、
受け手は自らの都合の良いように解釈を捻じ曲げてしまう。
簡単にまとめると、ユリウス・カエサルが遺したという名言、
「人間ならば誰にでも現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。」
限定効果論に関する話だけでなく、現代ネット社会の問題点も含め、
この言葉にすべてが集約されているように思う。
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