最近読んだ本の中で最も刺激を受けた一冊。
年末に2026年のお薦め本ベスト3には必ず入れると思う。
「いまを生きるための古典」という副題の通り、
様々な古典が引用されており、自らの読書の姿勢を正される。
人生は有限。
難解だからと読みつがれてきた古典から遠ざかり、
近刊本で寄り道しているような時間はないはずなのだ。
この本の最後のまとめあたりで紹介されていた、
ロラン・バルトがコレージュ・ド・フランスに就任した際の開講講義。
本の中では原文が引用されていなかったので探してみた。
※みすず書房から1981年に出版された「文字の記号学」に収録
「私もまた今日、この新たな場所、この新たな厚遇によって示された、新たな人生を歩み始めるのである。それゆえ私は、生きとし生ける者の生の力、つまり忘却に身をゆだねたいと思う。一生のうちには、自分の知っていることを教える時期がある。しかしつぎには、自分の知らないことを教える別の時期がやって来る。それが研究と呼ばれる。いまはおそらく、もう一つの経験をする時期がやって来たのである。つまり、学んだことを忘れてゆくという経験。自分が経てきたさまざまな知や文化や念の堆積に、忘却がほどこす予期しない手直しを自由におこなわせてゆくということ。この経験には、輝かしくも時代遅れの名前がつけられていると思う。ここではあえてその名前を、まさに語源的意味の分かれ目において、劣等感なしに採用することにしよう。すなわち「叡智」。なんの権力もなく、少しの知、少しの知恵、可能なかぎり多くの味わいをもつこと。」
ロラン・バルトが亡くなる3年前の62歳の時の講義で、
- これまで学んできたことを忘れる意思表明をして、
- そしてこの行為を「叡智」と呼んでいる。
私たちは過去に積み上げてきた知識や経験に安住しがち。
だから、そこから脱出しようとすることが「叡智」なのだと。
これは素晴らしい捉え方だ。


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