長崎・雲仙の旅館「雲仙福田屋」の「香ふく」で天ぷらをいただいた。

雲仙には1980年代から有機農業を営み、在来種野菜の種を採取してきた、
農家の岩﨑正利さんのおかげで、伝統野菜が手に入りやすいのだとか。
その野菜を使った天ぷらが目当てで雲仙を訪問した。
写真左端の人参は「黒田五寸人参」。
これが普段食べている人参にはない味わいだった。
そして、この人参が岩﨑さんが初めて種採りをした野菜であることが、
著書「種をあやす 在来種野菜と暮らした40年のことば」で綴られている。
その試行錯誤の過程が、人間社会への示唆に富んでいて興味深い。
- 当初は母本(種を取るために親として育てる)の選抜を厳しくしていけば、素晴らしい人参ができると思っていた。
- 姿やかたち、色で選抜していくと、10年目ぐらいまでは毎年少しずつ見栄えの良い人参が採れるようになった。しかし、それと反比例して種の取れる量が減少。
- 選ぶ母本の姿に多様性をもたせると、元の状態に戻っていく。しかし多様性を尊重しすぎると、姿かたちにばらつきが出すぎて農産物として出荷が難しくなる。自家採種を通して、人間社会と植物が生きる世界が似ていることを知った。
ここで栽培食物の種についてまとめておくと、
大きく分けて固定種とF1種の2種類があり、
- 在来種(固定種)…地域で何世代に渡って育てられ、自家採種を繰り返すことによって、その土地の環境に適応するように遺伝的に安定していった品種。
- F1種(一代雑種/”First flial generation”)…異なる性質の種を人工的に掛け合わせて作った雑種の一代目。
種の一代目はメンデルの法則により優性形質だけが現れることから、
見た目が均一に揃うため、F1種が圧倒的な支持を集めている。
ただ、F1種栽培のように食料生産を効率化・単純化するために、
遺伝的に均質な作物を大農場で栽培するようになったことで、
現代の人類が摂取するカロリーの90%は15種の植物に偏っている。
こんな時代だからこそ、食料供給のリスク分散として在来種が重要。
そしてもちろん、私のように観光の目的地を選ぶ際のきっかけにもなる。
「日本の各地にある在来種が、そこに行かないと食べられない、行ってでも食べたいと思われる特別な存在になっていけば、その地域だけの新しい価値、つまり宝物になります。現在はどこにいても何でも買えてしまう時代ですが、だからこそ、他では手に入らないものに価値が生まれるのでは、と思うのです。」(岩﨑正利「種をあやす」)
またキスやメゴチ等の代表食材が手に入りにくくなった今、
各地の伝統野菜をどう使うかが、未来の天ぷらには必須なのかもしれない。



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