3.11が告げたリスク管理社会の終わり

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日本は「核」を通じて2種類の破滅を経験したことになる。

  • ヒロシマは「」をなそうとして起きた道徳的な破滅
  • フクシマは「」をなそうとして起きた産業的な破滅

21世紀の脅威は、あからさまな悪意を持ったものではなく、

善意ではじまったものが、何かの拍子に猛威を振るうこと
にある。

フクシマ、サブプライムローン、地球温暖化などなど…

こんなはずじゃなかったのに…と私たちは知性の限界をさらしている。

20世紀には「富の分配」をめぐり、2度の世界大戦を経験した人類は、

科学技術により「富を生産」することで、この問題を解決したかに見えた。

でも科学技術が造り出す将来の「リスク」の問題が顕在化する。

主に確率・統計によってリスク管理しようと努めてきたが、

  • 何がリスクなのか把握することができない
  • リスクの責任の所在が分からない
  • リスクが顕在化したときの補償をしきれない

だから「思い描いた未来」と「やがて起きる現実」との溝に出会うと、

私たちは「想定外」を連呼して、思考欠如を露呈するばかり…

リスクを生産しておきながら、それを正しく認識できない大きな理由は、科学技術の合理性が「経済しか見ない単眼構造」にあるからである。

ウルリヒ・ベック「危険社会」P94

経済重視の世界は、成長を続けなければ衰退するリスクを生み、 
それを避けるためにさらなるリスク(原発・温暖化など)を抱え込む。

社会システムに何重にも編みこまれたリスクの把握は困難で、

もうける確実さというものと、損する確実さというものとのあいだにこそ無限があるのである。

パスカル「パンセ」断章233

リスク管理社会は損得の間にある無限の混沌に陥ってしまった

資本主義社会の終焉、と指摘する人もいるけどそれは違うと思う。

経済や人の幸福を数学的に計ろうとしたことが問題なのでは?

"As I see it, the economics profession went astray because economists, as a group, mistook beauty, clad in impressive-looking mathematics, for truth. Until the Great Depression, most economists clung to a vision of capitalism as a perfect or nearly perfect system.
- Paul Krugman"How Did Economists Get It So Wrong ?"

分かりやすさを求めれば、結局何も分からなくなる。

でも私たちは論理性連続性をこの世界に求めてしまう。

となると話は知性の限界や思考の欠如の問題へと逆戻り。

3.11から丸2年。

世界を読み解く方法を求め続け、でも見つからない。

そんな日々が続いている。。。

コメント

  1. 投資に関してのコメント:
    次の相場のクライシスは、本当に怖いっす。
    各国のお金の印刷量が並みではないから・・・その前にものすごい「何かバブル」が来るでしょうけど・・・。
    (中国(不動産含め)はどうかなぁ・・・)
    リスクが時間変化・条件変化するので見積もったつもりが見積もれていない・・・ということはリスクは読めないという前提で、脱出戦略を考える必要があるということ・・・はてさて・・・。
    影響も見積もれないし・・・。せめて、何かがバブっているかもと気づけば、サブプライムが教訓になるんですけどね。
    (サブプライムは騒がれてから、少し時間がってリーマンショックが来たので、せめて、このようなタイムラグがあればいいんだけど)
    このような経済のリスクなど人為的な面が絡んでいるけど制御不可能なものと、自然災害のような(環境破壊という人為的な面はあるとしても)自然が起こすリスク・・・ともにその影響度(起こった時のインパクト)が大きくなっていっている気がします。
    インパクトの大きさの想定もできなくなってくる。

  2. おしゃかしゃま~ より:

    『未知』の部分はあるもんですね。いつの時代もどんな物にも。どんな人にも。
    だからそれがある事を忘れたり、隠したり、目を背けたり、または完全に理解できているなんて慢心もしてはいけないと思う。
    『未知』の部分を知りたい、解明したいという思いが人を進化させるし、
    どんなものにも『未知』の部分があって、全てを把握して管理する事なんてできないと認識して、備える。または起きた後にどう対処するかが大事。
    起きないなんて絶対はこの世の中にはないのだから。
    そんな謙虚さと前進して行こうとする気持ちが大切なのかも。
    ・・・でも不安定なのを嫌うのが人間ですよね。
    安心を求めてリスクをコントロールしようとする。
    科学技術を手に入れて、それですべて管理できるものと思ってしまう勘違い。
    またはこのリスクというやっかいなものに向き合う一つの方法として『宗教』が生まれたのかも。
    難しいですね。人間って。
    何でも受け入れてどんな事が起きても動じず、しなやかに生き、前に進んでいく。
    まるで流れる水の如く。
    そんな生き方が出来たら理想的ですね。。。
    東日本大震災で被災された方々に心より哀悼を申し上げます。

  3. まろ@管理人 より:

    「投資」について。
    私自身は年齢的に次が最後のバブルかなと。そこでの動き次第で残りの人生、金銭的に豊かどうかが決まる。。。
    インパクトの大きさについては金額に惑わされちゃいけないですね。経済規模が昔より大きくなってますから。100年に1度の経済危機、と呼ばれながら全然違ってたように。
    「未知」について。
    過去に朝日新聞のCMに触発されて
    「LOVEとLIKEはどう違うのか?」
    http://www.pixy10.org/archives/5276505.html
    と語りました。
    異質なものへの憧れや自分にないものを求める情熱こそが愛。
    相手のすべてが分かってしまっては気持ちがさめてしまう。
    こんな切り口からも「未知」な部分は「未知」のままおいておくことが大切なんだと思います。