山中伸弥×羽生善治「人間の未来 AIの未来」

この記事は約3分で読めます。

山中伸弥教授と将棋の羽生善治さんの対談本を読んだ。
羽生さんの発言からいくつかピックアップして編集しておく。

AIに「ふなっしー」は作れない

本のタイトルでもあるAIに関しては目新しい話はなかった。

昨年出版された羽生善治「人工知能の核心」でも書かれていた、
人間とAIの違いは美意識にあるという見解が再び示されていた。

でも人間とAIの創造性についての具体例はおもしろかった。
創造とは過去の出来事の新しい組み合わせにすぎないのだから、
AIが人間的な創造性を披露するのは簡単に思えるが、

いくら過去のヒット商品のデータを集めても、初音ミクを作ることはできても、ふなっしーのように、あんな大雑把なデザインで大人気を得られる、突然変異種のようなものを生み出すことはできないでしょう。AIはデータに基づいて人々が好むもの、選ぶものを予測するのは得意ですが、とんでもないものを好きになる、意外性を愛する人間の可能性は予測できないはずです。それこそ人間にしかできない創造的行為だと思います。

現代を生き抜く知恵

たとえば私も「若い人たちに何かメッセージをいただけませんか?」と聞かれることがあります。そんなときには「今まで自分がやったことがないとか、経験したことがないとか、そういう羅針盤が利かない状況に身を置くことが大事なのではないでしょうか」と答えることが多いんですね。

この話は東浩紀「弱いつながり」が指摘していたことに似ている。
2000年代前半は「見たいものが見れる」と期待を集めたインターネットは、
今では「見たいものしか見ていない」自分好みの無限ループの世界に変わった。
そこで思考停止に陥らずに、いかに抜け出すかが大切な時代なのだ。

経験が足かせになる

羽生さんは2005年出版の初めての著書「決断力」以来、
経験がもたらす副作用を様々な表現で訴え続けているのが特徴で、

頭の中にたくさん情報を詰め込んでしまうと、先入観や固定観念ができてしまって、これまでにまったくなかったもの、既成概念を破壊するようなことが思い浮かばなくなってしまう。それはよくないな、と思うことが多いですね。

リスクは今の視点で見るか、それとも十年後の視点で見るかによって、その中身が変わります。同じ選択をしていても、その時々でリスクの量が違ってくることがあります。自分がその時、リスクを取るかどうかの選択は、アクセルとブレーキの関係と似ています。四十代になると、今までの経験に基づいて、知らず知らずのうちにブレーキを踏んでいることが多くなります。だから意図的にアクセルを強めに踏むくらいでちょうどいいのかな、と思っています。

私自身も投資をはじめて18年になるけど、
最近になって思い切りがなくなったように感じていた。
ここ数年は上昇相場の中でまれに起きる小さなクラッシュに、
どれだけ早く反応できるかが勝負だが、どうも瞬発力が落ちている。

ちょうど今年40歳になるので、意図的にアクセルを強めに踏む、
という話はとても良いアドバイスをもらえた気がする。

人間の未来 AIの未来
講談社
¥1,540(2024/03/29 21:34時点)

コメント