単一品種の食物生産に頼るリスク/ロブ・ダン「世界からバナナがなくなるまえに」

「生物多様性」という言葉を耳にするようになったのは、
2010年に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、
名古屋で開催されてからのことだろう。

しかし正直なところ、これまで身近に感じることはなく、
逆に考え方の前提がおかしいのでは?とさえ思っていた。

生物多様性とはやや切り口が違うのかもしれないが、
食物が多様性を失うことがもたらす危機を描いた

を読んで「数」に着目することの大切さを認識した。

邦題がヘンテコなので英語の原題を紹介すると、

“Never Out of Season: How Having the Food We Want When We Want It Threatens Our Food Supply and Our Future”

食料生産を効率化・単純化するために、
遺伝的に均質な作物を大農場で栽培するようになったことで、

  • 13,000年前の人類は1週間のうちに数百種の植物や動物を消費
  • 現代の人類が消費しているカロリーの90%は15種の植物から採種

という状況になってしまっている。

遺伝的に均質なのがなぜいけないのか?といえば、
病気が一気に広がり、壊滅的な被害を受けることになるから
だ。

本書ではバナナをはじめとした事例が示されているが、
第6章「チョコレートテロ」の話は衝撃的な内容だ。

かつてカカオの世界的な生産地だったブラジルで、
天狗巣病にカカオの木に広がったことで大打撃を受ける。
これにより1989年には世界第2位のチョコレート生産国だったブラジルは、
そのわずか4年後にはチョコレートの純輸入国に転落してしまう。

最大の収穫を期待できる一品種のカカオを木に頼っていたことが、
ここまで被害が大きくなった理由だが、実は病気のきっかけは、
わずか数名が故意にカカオの木を天狗巣病に感染させたこと。
裕福な農園主に対する小さな抵抗がカカオ帝国ブラジルを崩壊させた。

投資の世界では分散投資の大切さが訴えられているが、
食物生産においてはリスク分散の考え方はどこへやら?
と考えたところでふと思う。

食物生産が多様な品種を栽培して長期的な持続可能性を図るのではなく、
単一品種を栽培して短期的な利益を確保に走ってしまうのは、
やはりどこかで投資家の資金の動きが関係していると見て間違いない。
それは以前調べた種子ビジネスの現状からもなんとなく分かる。

そして投資家が分散投資で資産防衛を図っているが、
そこで軽減されたリスクが社会全体に転嫁されているのでは?
という仮説を持ちながら、特に証明する手立てがなくてモヤモヤする。

とりあえずは消費者として伝統野菜を食べることで、
食物生産の多様性に貢献することが大切ということになるだろうか。